1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03650378
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
馬場 俊介 名古屋大学, 工学部, 助教授 (10111832)
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Keywords | 土木史 / 近代化遺産 / 文化財 / 保存・活用 / 評価基準 |
Research Abstract |
平成3年度には、中部5県(愛知・岐阜・三重・静岡・長野)に現存する近代土木構造物(明治〜昭和戦前)の中で、比較的名古屋に近い地域についてアンケート調査と現地調査を実施した。平成4年度には、岐阜県飛騨北部、三重県伊勢・尾鷲地方、静岡県東部、長野県中・北部といった名古屋からみて遠隔地の調査を実施した。まず、アンケートは、(1)既調査地域についてデータの漏れを確認するための調査、ならびに、(2)新規地域についての調査を平行して実施するため、各県の土木部と教育委員会の協力のもとに、全市町村に2ルートからデータの収集を依頼した。得られたデータの総数は1980件に達し(重複含む)、平成3年度の804件から大幅に増加した。現地調査地点は、平成3年度の507ヶ所から、平成4年度は575ヶ所増え、総計1082ヶ所となった。 土木構造物の評価には、従来の文化財的な視点とは異なった評価軸の導入が必要である。平成4年2月に暫定的に導入した「近代土木構造物の評価基準(6評価軸、加減点法)」により、1082ヶ所の土木構造物を評価すると、(1)中部5県を代表する近代土木遺産(将来の文化財候補)27件、(2)重要度の高い土木構造物88件、(3)重要度は高くないがそれなりに立派な土木構造物200件弱、(4)それ以外となった。また、全データの4割を占める道路橋について、技術的観点からの評価基準を新たに作成し、より客観的な評価を可能にした。 本調査研究の結果、最終的にリストアップされた300件ほどの重要土木構造物(上記(1)〜(3))は、一部鋼橋以外は今まで存在が全く知られておらず、地元においても無視されていたものが過半を占めている。今後歴史的景観を重視した地域性の高い社会基盤の整備を行っていく上で、今回の調査・分析の結果得られた知見は大きな役割を果すものと期待される。
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