1991 Fiscal Year Annual Research Report
組織社会における家族経営の意義と限界ー日本農業の経営組織の展望ー
Project/Area Number |
03660225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 信和 東京大学, 農学部, 助教授 (80163632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田切 徳美 東京大学, 農学部, 助手 (10201998)
坪井 伸広 農業研究センター, 経営管理部, 室長
今村 奈良臣 東京大学, 農学部, 教授 (60020525)
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Keywords | 戦後日本農業 / 家族農業経営 / 直系家族 / 家族協業 / 家族経営の動揺 |
Research Abstract |
日本農業においては、直系家族形態をとる家族経営が農業経営の担い手であることを特徴としてきた。農地法、農協法など戦後農業を支えた基本法制も、農業は家族経営によって担われることを前提としている。 かつて、家族経営には次のような「強み」が存在した。 (1)熟練度、強度、種類の面で多様な手労働を必要とする農業生産に、青年層から高齢者層、男子と女子という多質・多量の労働力を抱えた直系家族の労働力構成が適合的である。 (2)農業生産の季節性、生産過程の長期性など生物時間に規定された生産には、資本性企業成立の根幹である分業に基づく協業が馴染まず、家族労働の協業が適合した。 (3)直系家族員には「いえ」をまもる意識が支配的で、コスト無しでの労働力の確保、低コストでの労働力再生産が可能であった。 しかし、この家族経営の「強み」は、一定の社会・経済的条件の下において成立するもので、その状況が変化すれば「強み」が消滅する可能性がある点に注意をするべきであろう。 実際、戦後日本農業の変遷は、そのような変化が生じつつあることを示している。農業生産において生物時間の領域に機械的時間が侵入し、農業労働が手労働段階から機械労働段階へ転換したこと。生産手段の高度化とそれに伴う作業効率向上への要求。肉体的労働だけではなく、経営管理など高度な能力を必要とする労働の増加。家族労働力の再生産コストの高騰。このような状態変化が家族経営の「強み」を消滅させ、その存続を揺るがしているのが、日本農業の「現段階」であろう。
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Research Products
(2 results)