1991 Fiscal Year Annual Research Report
生命の起源研究についての科学史的研究:1920年代から1950年代まで
Project/Area Number |
03680094
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江上 生子 東京工業大学, 工学部, 助手 (80016493)
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Keywords | オパ-リン / 1924年論文 / ダ-ウィニズム / コロイド化学 / 唯物論哲学 / アナロジ- |
Research Abstract |
本年度は、生命起原研究史のうちの最も初期に当るオパ-リンの1924年の論文を中心に分析し、その結果、以下の5点が明らかになった。 (1).生命の発生の考察において生物進化における自然選択の概念を援用しているが、24年論文もそれが基調になっている。オバ-リンは極く初期から、ダ-ウィニズムの伝統の中にいたことがわかる。 (2).後の、物質の弁証法的発展としての生命の発生という解釈に対し、“コロイド液中に偶然に、凝固物あるいはゲル"が生じ、それが生物になっていったとしており、必然性を強調していない。 (3).コロイド化学には初期から注目しており、1930年代にB.de Jongによってコアセルヴェ-トの概念が使われるようになる以前には、(2)のような表現であるが、36年2は、その語を使用している。 (4).物質の進化における生命の起原という考え方は上記のように初期からあったが、“化学進化"は使われず、“有機物質の進化"のようなことばで表現している。 (5).方法論的にはアナロジ-による考え方が多く使われ(コロイドの凝固物と原形質、白金と代謝における酵素など)、この点でも、ダ-ウィンの方法と比較することができる。 まとめ:オパ-リンは物期から生命の源原の問題について基本的には後の考え方と同一で、初期から一貫して、自然選択による物質の進化の経過の中での生命の源原、を想定していた。唯物論哲学や、コロイド化学上の概念のとりこみなどによって細かい部分には変化がみられる。
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