1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03801027
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
有元 正雄 広島大学, 文学部, 教授 (60079267)
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Keywords | 真宗優越地帯 / 堕胎・間引の忌避 / 養蚕・殺蛹の忌避 / 勤勉のエ-トス / 出稼ぎ・移位型経済活動 |
Research Abstract |
現在までに解明し得た点は次の如くである。 1)ほぼ明治13〜22年頃までの府県統計書によって郡制施行前の旧郡単位に宗派別寺院率を計算・作表し、これによって徳川期旧郡単位に真宗優越地帯を検出することができた。(資料紹介「明治前期宗派別寺院統計、印刷中)。 2)真宗篤信地帯における門徒の特徴的エ-トスとして殺生忌避を上げることができる。特に堕胎・間引の忌避について、史科的には越後・越中・安芸・石見等で確認でき、武陽隠士の『世事見聞録』によって全般的に知ることができる。殺生忌避は養蚕・殺蛹の忌避にまで及ぶ。この点、肥後・安芸・石見・越前足羽郡等において確認できた。特に越前足羽郡においては養蚕のみならず家貧の飼育忌避があったことが知られる。この点安芸国を対家として「安芸門徒の信仰とエ-ス」を印刷中であり、また目下「近世真宗門徒における殺生忌避」を執筆中である。 3)真宗門徒のいま一つの特徴的なエ-トスとして勤勉がある。勤勉のエ-トスと、堕胎、間引の忌避よりもたらされる人は増加=潜在的過剰人口の圧力が結合するとき出稼ぎ、移住型経済活動が活発となる。しかも彼らは量的に多いのみならず質的にも優劣である。明治期までに限ってみれば、北陸門徒地帯の民衆が北海道開発の中間的担い手となり、西日本門徒地帯の広島・山口・熊本・福岡の四県民がハワイ・北米移民の中心となる。亦西日本門徒地帯の民衆が台湾・関東州・朝鮮等旧植民圏移住民の中核である点等を、広島県を中心として完証した。(「広島県移民の特質と背景」印刷中)。 以上の他に平成四年度の史料採取と並行しつつ、真宗宗教社会史研究の前提となる「近世真宗の構成と特質」と題する大型論文を本年9月初旬までに作成予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 有元 正雄: "安芸門徒の信仰とエ-トス" 広島館公文書館「紀要」. 第15号. 1-32 (1992)
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[Publications] 有元 正雄: "資料紹介「明治制期郡区別宗派別寺院統計」" 内海文化研究紀要. 第21号. (1992)
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[Publications] 有元 正雄,天野 卓郎,児玉 正昭 ほか: "広島県 移住史" 広島県, 700 (1992)