1992 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆性老人と高齢精神薄弱者の居住環境構成に関する研究
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03805053
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
荒木 兵一郎 関西大学, 工学部, 教授 (00067547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 啓 関西大学, 工学部, 助手 (50140249)
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Keywords | 痴呆性老人 / 高齢精神薄弱者 / 居住環境 / 行動特性 / 日常生活動作能力 |
Research Abstract |
平成4年度における研究計画は、精神面と身体面の両面でハンディキャップをもつ痴呆性老人と高齢精神薄弱者について、その居住する住宅を訪問し、各種の生活行為の実態と問題点を面接アンケート方式によって尋ねるとともに、住宅の間取りや対応状況の工夫などを調査することである。調査は予定通り遂行し、成果の概要はつぎの通りである。 痴呆性老人の症状と住まい方との関連をみると、初期では、いわゆる「もの忘れ」が進行した失見当識がみられる程度であり、介護者による見守りがあれば、生活行為の多くは自立できる。しかし、徘徊行為が発生すると、安全配慮のためか、戸締りや、火・刃物の使用禁止など抑制状況がみられる。さらに、失禁や弄便などの不潔行為が発生すると、個室への閉じ込めや、介護者の添い寝など、重介護状況がみられる。加えて身体的能力が低下すると、ベッドへの寝たきりとなる。寝たきりとなれば、徘徊は停止、介護は比較的に軽減される。これらのことについては、段階群別の比較検討を行い、有意差を得ている。 高齢精神薄弱者については、加齢による身体面での自立度の変化(洗面行為や布団の上げ下ろし行為などが困難になるなど)はみられるが、精神面での変化は少なく、それも長年の生活で馴化されているので、痴呆性老人にみられるような問題行動を惹起することは少ない(てんかんなどの一時的な発作はみられる)。しかし、介護者である親や兄弟等が高齢化したり、死亡したりしてきており、家庭内介護者の欠如に対する不安を強く訴えている。また現在は、農業や家庭内作業等を継続していることが多いが、働けなくなることは目前であり、公的な介護システムの整備や、即刻の施設入所さえもを過半の家庭で要求している。 関連研究として、施設入所者239名について、日常生活動作能力の5年間の経年変化に関する資料を入手し、これの分析も実施している。
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[Publications] 足立 啓・荒木 兵一郎: "屋内歩行時の視覚誘導情報への痴呆性老人と精神薄弱者の注視に関する実験的研究" 日本建築学会計画系論文報告集. 439. 55-64 (1992)
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[Publications] 荒木 兵一郎・足立 啓 ほか: "住宅改善による高齢者の生活行動の変化" 技苑(関西大学工業技術研究所). 71. 53-58 (1992)
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[Publications] 荒木 兵一郎 ほか: "福祉のまちづくりに向けて/大阪府下の建築物の福祉整備の状況" 日本建築学会近畿支部研究報告集. 32. 869-872 (1992)
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[Publications] 足立 啓・荒木 兵一郎: "屋内歩行時の注視点の規定と標識への注視傾向ー痴呆性老人と精神薄弱者の視覚情報探索行動についてー" 日本建築学会大会学術講演梗概集. E. 553-554 (1992)
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[Publications] 足立 啓・荒木 兵一郎: "T字経路の探索歩行時における矢印への注視傾向ー痴呆性老人と精神薄弱者の視覚情報探索行動についてー" 日本建築学会大会学術講演梗概集. E. 555-556 (1992)
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[Publications] 荒木 兵一郎: "痴呆性老人の探索歩行" 生理人類学会第29回大会研究報告集. 29. 127- (1992)
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[Publications] 荒木 兵一郎・足立 啓(共著): "痴呆性老人のケア環境/老人ホームの建物・設備のくふう" 全国社会福祉協議会, 89 (1992)
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[Publications] 荒木 兵一郎・足立 啓(共著): "老人ホームにおける痴呆性老人の安全対策とケア環境" 全国社会福祉協議会, 39 (1992)