痴呆性老人と高齢精神薄弱者の居住環境構成に関する研究

1993 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 03805053
• Research Institution: Kansai University
• Principal Investigator: 荒木 兵一郎 関西大学, 工学部, 教授 (00067547)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 足立 啓 関西大学, 工学部, 助手 (50140249)
• Keywords: 痴呆性老人 / 高齢精神薄弱者 / 居住環境 / 日常生活動作能力 / 探索行動

Research Abstract

本年度においては、計画とは少し異なるが被験者の行動特性を明確にするため、【.encircled1.】痴呆性老人についてはアルツハイマー型と脳血管障害型に分類して探索歩行時の視覚誘導情報に対する注視傾向を検討し、【.encircled2.】高齢精神薄弱者については日常生活動作能力の世代間比較と経年変化について検討している。
【.encircled1.】医学においては痴呆性老人をアルツハイマー型と脳血管障害型に分類している。われわれはこれまでは分類せずに健常者との比較によって痴呆性老人の特性を抽出していた。そこで今回は医者の協力を得て分類し、この両者の相違を検討している。実験は施設の廊下に視覚誘導情報(連続した矢印や丸印など)を設置して、これらを探索歩行させ、これらへの注視状況をアイカメラ・レコーダーで記録している。健常者であれば視覚誘導情報のすべてを探索し目的地に到達しているが、アルツハイマー型は3〜4割、脳血管障害型は5〜7割が目的地に到達している。両者とも廊下の分岐点で混乱し、アルツハイマー型は視覚誘導情報を注視せずに直進や誤折することが多いが、脳血管障害型では実験を重ねると学習効果によって成績が向上している。なお、両者とも点滅式の情報には注視率が高まっており、これの有効性が示唆される。
【.encircled2.】精神薄弱者は早老の傾向があり、現況では50歳以上の者を高齢精神薄弱者と定義されている。ここではこの高齢精神薄弱者の日常生活動作能力について世代間比較と経年変化を検討した。資料はK施設が保存する239事例であり、食事や排泄・脱衣などの生存にかかわる行為やプライバシーが要求される行為については加齢しても自立度は保持されるが、洗面や洗濯などの行為は省略されたり、他人に依存されやすくなること、また外出や購買能力などは若年時代から困難であり、これの加齢変化は少ないなどが抽出された。
なお、これらの成果は裏面に記載のとおり、公表している。

Research Products

• [Publications] 荒木兵一郎: "福祉のまちづくりに関する研究/大阪府下建築物の福祉対応整備状況" 日本都市計画学会学術研究論文集. 28. 811-816 (1993)
• [Publications] 足立啓・荒木兵一郎: "動的誘導情報に対する注視特性の検討" 日本建築学会計画系論文報告集. 447. 43-49 (1993)
• [Publications] 荒木兵一郎・足立啓: "痴呆性老人の居住環境構成に関する研究" 大阪ガスグループ福祉財団研究調査報告集. 6. 17-22 (1993)
• [Publications] 荒木兵一郎: "高齢精神薄弱者の居住環境構成に関する研究/日常生活動作能力の世代間比較" 日本建築学会大会学術講演梗概集. E. 561-562 (1993)
• [Publications] 足立啓・荒木兵一郎: "探索歩行時の視覚誘導情報(連続・非連続)に対する注視傾向" 日本建築学会大会学術講演梗概集. E. 973-974 (1993)
• [Publications] 足立啓・荒木兵一郎ほか: "探索歩行時の往路・復路の視覚情報への注視傾向" 日本建築学会大会学術講演梗概集. E. 975-976 (1993)
• [Publications] 荒木兵一郎(分担): "老人性痴呆/地域ケアの実践に向けて第7章痴呆性老人の居住環境" 医歯薬出版, 119(8) (1993)
• [Publications] 荒木兵一郎ほか: "現代福祉学レキシコン" 雄山閣出版, 582 (1993)