1992 Fiscal Year Annual Research Report
サラワクのフタバガキ林における植物の繁殖システムと動物の季節変動
Project/Area Number |
04041067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 民二 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (90109041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ABANG A Hami サラワク林野庁, 研究員
LEE Hua Seng サラワク林野庁, 研究担当次官
永益 英敏 京都大学, 総合人間学部, 助手 (90218024)
山根 正気 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (30145453)
市野 隆雄 香川大学, 農学部, 助手 (20176291)
加藤 真 京都大学, 総合人間学部, 助手 (80204494)
寺内 良平 京都大学, 理学部, 助手 (50236981)
湯本 貴和 神戸大学, 総合人間学部, 講師 (70192804)
甲山 隆司 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (60178233)
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Keywords | 熱帯雨林 / 混交フタバガキ林 / 環境変動 / 植物繁殖システム / 動植相互作用系 / 送粉共生系 / 個体群動態 / 個体群遺伝構造 |
Research Abstract |
サラワク林野庁との協力のもと、予定していた以下の調査項目が順調に進展している。1992年春に一斉開花があり、調査を開始した8月には結実がおこった。以後、最低つぎの一斉開花まで調査を行う仕組みができあがった。 (1)林冠観測システムの設営。サラワク州ランビル国立公園内の混交フタバガキ林内に5ヘクタールの林冠調査区を設定、測量し、そのなかに1本のツリータワーと5本のウオークウエイが完成した。調査区の最大樹高は70メートルをこえるが、そのほぼ先端部までアクセスできるようになった。今後、さらに1本のツリータワーと5本のウオークウエイを建設する。 (2)ツリータワーの35メートル(高木層の上部)に微気象自動観測装置の設置が完了し、連続観測を開始した。 (3)林冠部4ヶ所に昆虫採集用の各種トラップ(ライトトラップ、マレーゼトラップなど)を設置し、月2回の調査を1992年8月より開始した。また、アリ、ハナバチなどのファウナ調査も終り、現在検索表を作製中である。 (4)植物フェノロジー調査。ツリータワー、ウオークウェイ沿いの樹木、つる、着生などすべての植物に個体識別コードをつけ、月2回、個体ごとに開花、結実にいたる繁殖ステージと展枝、展葉の生長ステージの調査を1992年8月より開始した。 (5)植物個体群の遺伝構造の解析。フタバガキ林を構成するDryobalanops lanceolataの個体ごとのDNAの資料を採取し、現在両親の特定をフィンガープリンティング法によっておこなっている。 (6)動植相互作用系の解析。送粉、種子散布など植物の繁殖過程ではたす動物の役割の調査をおこなった。また、アリと共生した植物の共生関係に関する予備調査が完了した。 (7)植物と昆虫標本の系統的管理、同定システムをクチンの林野庁森林研究所内に設けた。また、標本持ち出しの許可もえた。
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[Publications] 井上 民二: "サラワクの森" 毎日新聞(夕刊). 4ガツ4カ (1992)
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[Publications] 井上 民二(監修、訳): "熱帯雨林の楽園 キャノピーの生き物たち 上,中,下" 科学朝日. 53-1,2,3. 132-137 (1993)
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[Publications] 井上 民二: "送粉共生系の力学と送粉者の採餌戦略" 花に引き寄せられる動物-植物と送粉者の共進化 平凡社. 9-32 (1993)
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[Publications] INOUE,T.;NAKAMURA,K.;Salmah,S.;Abbas,I.: "Population Dynamics of Animals in unpredictably-Changing tropical environments" J.Bioscience(Special Issue).
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[Publications] 井上 民二;加藤 真: "花に引き寄せられる動物-植物と送粉者の共進化" 平凡社, 286 (1993)
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[Publications] 井上 民二(責任編集): "週刊朝日百科『動物たちの地球』110号 熱帯雨林II" 朝日新聞社, (1993)