1993 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌の遺伝的ならびに環境的発生要因の日中比較研究
Project/Area Number |
04045028
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
飯田 太 信州大学, 医学部, 教授 (00020850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 育敏 中国河北医学院, 第4病院, 教授
杜 喜群 中国河北医学院, 第4病院, 教授
馬 志学 中国河北医学院, 第4病院, 教授
呉 沈春 中国河北医学院, 教授
安達 亙 信州大学, 医学部, 講師 (20201288)
那須 民江 信州大学, 医学部, 講師 (10020794)
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Keywords | 食道癌 / 癌抑制遺伝子 / 手術後生存率 / 発癌物質 / シトクロムP450 / リンパ節転移 / 栄養素 / グルタチオンS-トランスフェラーゼ |
Research Abstract |
1、癌抑制遺伝子に関する研究成果 中国人48名と日本人45名の食道扁平上皮癌症例からDNAを抽出し、41種類のRFLPマーカーを用いて、常染色体のLOHを検索した。3p、3q、5q、9p、9q、10p、13q、17p、17q、18q、19q、21qに30%以上のLOHを認め、従来の報告以外にも複数の癌抑制遺伝子の関与が示唆された。さらに19qのLOHはリンパ節転移に、17qのLOHは性別に有為な相関を認めた。(以上の成績はGene,Chromsomes & Cancer,1994に発表した。) 2、食道癌外科治療成績の比較 最近11年間に信州大学第2外科で扱った胸部食道癌140例(二外群)と、最近6年間に河北医学院第4病院胸部外科で扱った1164例(河北群)との間で比較検討を行った。河北群は二外群に比較して女性が多く、胸部中部食道の頻度が高く、リンパ節転移陽性頻度が低かった。外科治療成績については、術後合併症は河北群で低く、術後生存率は深達度別の検討では全ての群で河北群が有意に良好であったがstage別検討では両群間に有意差はなかった。以上日中食道癌にはリンパ節転移の頻度に相違があり、両国の食道癌の悪性度の差を表しているものと考えられた。(以上の成績は第42回日本消化器外科学会に発表した。) 3、発癌物質の活性化および解毒に関与する酵素の研究成果 食道癌患者の食道組織におけるシトクロムP450(CYP)とグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の発現を検討した。CYP1A2/1は検討したすべての食道組織(40例)に発現し、その量は肝より多かった。GSTM1の発現は約40%程度であり、約60%にGSTM1遺伝子の欠損が発見された。GSTM3、GSTA、GSTPはすべての組織で発現していた。一方、食道組織にはGST活性がみられることが活性測定で明かとなった。以上の結果は化学発癌物質が食道粘膜組織でCYPにより直接活性化あるいはGSTにより解毒されることを示す。 4、栄養摂取状況の調査成績 中国河北省の食道癌高、中、低発地域および河北医学院第四病院における食道癌患者に対して栄養摂取状況調査を行った。食道癌高発地域の住民及び食道癌患者は食道癌低発地域住民より芋類、果物類、肉類の摂取量が少なく、栄養素として、蛋白質やビタミン類の摂取量が低いことが判明した。
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