1992 Fiscal Year Annual Research Report
農村地域における在宅ケアとコミュニティ・ケアに関する比較研究
Project/Area Number |
04301014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 勉 東北大学, 文学部, 教授 (10004037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 政広 東北学院大学, 教養学部, 講師 (30187075)
村中 知子 茨城大学, 教養部, 教授 (30091755)
小林 月子 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (00004094)
谷田部 武男 東北学院大学, 教養学部, 助教授 (50150769)
横井 修一 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (00048802)
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Keywords | 在宅ケア / コミュニティ・ケア・システム / ネットワーキング / 地域医療システム / 医療の質 / 生態学的な原理 |
Research Abstract |
岩手県沢内村、長野県武石村をはじめ、長野県佐久地区、新潟県大和町および秋田県五城目町において、在宅ケアとコミュニティ・ケア・システムの展開過程についての事例研究を進め、さらに在宅ケアの対象者と介護者についての生活史的分析を行った。それらの分析をとおして次の知見をえた。1)地域医療システムにおける関係諸機関のネットワーキングの形成にとって、自治体の関係者と医療当事者との密接な連携プレイが必要不可欠であると同時に、その実行の困難であることが確認された。2)地域医療システムの規模の拡大が医療の質の向上と必ずしも連動せず、小規模なシステムの有効性が判明した。システムの構造がいかにすぐれていても、規模が拡大すると、システムの本来の機能よりも、システムの存続維持が重視されがちなことが明らかになった。3)同時に、小規模な地域医療システムという点で成功している沢内村や武石村の事例では、経済的効率の低さが否めず、住民にとって質の高い医療の実現が、自治体の財政を限りなく圧迫しており、この「優良な」コミュニティ・ケア・システムの存廃をめぐって、住民を二分する「政争」が少なくとも潜在的に進行中である。4)現在のところ、コミュニティ・ケア・システムの良質な作動にとって、現行の医療体制は重大な攪乱要因となっていることが明確にされた。日本社会システム全体の駆動原理が、効率第一主義の工業社会のパラダイムから、人間と自然の共生をはかる生態学的な原理に移行することが、回り道のようにみえながら、地域医療システムの確立の根本前提であることが少しずつ判明しつつある。
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