1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04301024
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
交野 正芳 愛知大学, 文学部, 教授 (50113056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蘭 信三 熊本大学, 文学部, 助教授 (30159503)
鰺坂 学 広島大学, 総合科学部, 教授 (60135960)
青木 康容 同志社大学, 文学部, 教授 (40104616)
丸木 恵祐 金城学院大学, 文学部, 教授 (30079454)
松本 通晴 同志社大学, 文学部, 教授 (90066142)
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Keywords | 上甑村江石 / 社会移動調査 / むらの構造 / 住民移動 / 高齢者問題 / 過疎 |
Research Abstract |
現地調査を行った。選定した地域は鹿児島県・上甑村(甑島には4行政村ある)の7集落のひとつ江石である。すでに人口減少・高齢化地域であり、したがって人口を排出する地域の特徴を備えている。 集落の世帯調査をおこなった(「江石における社会移動調査」)。調査時点で128世帯。移動の実態を、世帯調査票、個人調査票、他出調査票、他出の歴史調査票の4種類の調査票を用いた。現在分析をすすめつつある。 この事例は、地域移動が定住地域の物的基盤、社会関係などの諸条件に規定されている側面をより明確に現している。4軒の網元(定置網漁業)を軸にむら秩序が経済的・政治的構造をはじめ住民生活全体を階層的に規制していた。網元が衰退する昭和40年代までは網元-網子がむらの社会関係を基礎づけていた。共有地(田・畑)もむらの構造に決定的な要因となった。共有地の利用形態も漁業とともにむらの秩序要素、つまりシステムの機能的要件の主たるものであった。それらの推移は江石集落の社会システムに大きな転換期をもたらした。 漁業者(網元・網子)が江石以外の他地域の網元(長崎や下関)へ行くという他出が江石の特徴となった。それは江石の住民移動の状況が新たな時期を迎えたことを意味した(他出は以前からもあったが、地域は長崎-造船所、熊本-女中奉公・丁稚奉公などが多かった。そして単身の出稼ぎが主流であった)。 他出の特徴として全国的な60年代の人口の地域移動に近い傾向を示していて、甑島では先回の瀬々野浦(昭和58・59年度の科研費研究での対象集落)とは対照的な事例でありながら、移動先の都市においては他集落と共有する特徴を表している。帰村の要因に定年がある。地域としての存在理由の中に定年者(高齢者)のための生活環境の整備が挙げられよう。そのための制度的基盤が確率されなければならない。
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