1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04301047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平田 隆一 東北大学, 教養部, 教授 (00048779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 浩 青山学院大学, 文学部, 助教授 (20153918)
岩井 経男 弘前大学, 人文学部, 教授 (10113771)
田村 孝 名古屋短期大学, 教授 (80179902)
古山 正人 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (20181472)
山川 広司 北海道教育大学, 教育学部釧路分校, 教授 (30113682)
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Keywords | ギリシア / ローマ / 不正 / 社会 / 帝政 / 王 / 悪 / 法 |
Research Abstract |
各研究者は、それぞれのテーマに従って新しい知見を得るべく研究を深め、次のような成果を得た。山川は、ミュケナイ期の土地保有関係の実態を整理し、土地形態をめぐる紛争を社会的不正現象としてとらえ、その紛争のもつ意味を考察した。古山は、古代スパルタにおける買収の問題に関する基本文献を検討しつつ、買収に対するスパルタの法制度や刑、あるいは社会の意識がどのようなものであったのか等について研究を深めた。清宮は、古代ギリシアの「徳政令」は古代メソポタミア・ユダヤのそれとはあり方が異なるが、その相違は一つには「再分配」のあり方の相違に起因すると思われると推論した。田村は、前1世紀の小アジアのヘレニズム王国の王たちは地中海に進出したローマ人の社会的・経済的活動を不正行為と見たが、かかる活動をミトリダテス6世の事例として王のsuperbiaに焦点を合わせ、これを有した王が「悪い王」と考えられた歴史的背景を検討した。岩井は、同盟市戦争後イタリア人が徐々にローマの政界に進出していった事例研究として、イタリア出身の政治家ウァティニウスを中心に研究し、彼にまつわる悪のイメージの実態を考察した。新保は、ローマ帝政初期の皇帝裁判を検討し、有力議員が圧倒的に多く断罪され、また各皇帝の治世後半に皇帝裁判の急増に対し、元老院裁判には変化が見られないことを解明した。阪本は、帝政初期の社会的不正を解明すべく、タキトゥスの中の“iniuria"を検討し、この語が半分以上「侮辱」の意味で使われ、「不正」には「貧欲」等の語が使用されていることを突きとめた。浦野は、ローマ帝政後期に有力者の不正から平民を保護するために設置されたdefensorが、一貫して都市的役職であり、国家の官僚としての性格が弱いことを明らかにした。
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