1993 Fiscal Year Annual Research Report
日本型資本主義の調整(レギュラシオン)様式に関する制度的・計量的研究
Project/Area Number |
04301070
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 鋭夫 名古屋大学, 経済学部, 教授 (10024978)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植村 博恭 名古屋大学, 経済学部, 助教授 (70184976)
井上 泰夫 名古屋市立大学, 経済学部, 助教授 (80160000)
磯谷 明徳 九州大学, 経済学部, 助教授 (60168284)
都留 康 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (00155441)
平野 泰朗 福岡県立大学, 人間社会学部, 助教授 (20165195)
|
Keywords | 日本型資本主義 / 調整(レギュラシオン) / 成長体制 / 賃労働関係 / 企業主義 / レギュラシオン理論 / フォーディズム / トヨティズム |
Research Abstract |
(I)レギュラシオン理論の方法論、(II)日本型資本主義へのレギュラシオン・アプローチ(総論)、(III)制度諸形態、(IV)蓄積体制と調整様式、にわたって研究の総括がなされた。 まず、(I)レギュラシオン理論自体に関する方法論的研究の進展がはかられ、特にミクロとマクロをつなぐものとしての「賃労働関係」の概念の重要性が検討され(平野)、それとともに制度分析の基礎としてミクロ経済主体の理論が、探求された(磯谷)。 (II)日本資本主義ヘのレギュラシオン・アプローチの方法論的枠組みの総括的検討がなされ、それに基づいて、「企業主義的レギュラシオン」仮説が提示され(山田)、その観点から日本型資本主義分析の研究史の総括的検討がなされた(磯谷)。 (III)以上の仮説の提示をうけて、企業主義的レギュラシオンを構成する各制度諸形態が分析された。特に、春闘における産業間賃金波及効果が計量経済学的に分析され、そのメゾ・レベルの調整様式としての重要性が確認された(都留)。また、レギュラシオン理論が、現在進行中の「第二の大転換」に際して注目しているフレキシビリティの問題が検討され、「攻めのフレキシビリティ」と「守りのフレキシビリティ」という概念が析出された(井上)。これをうけて、日本型資本主義の高いフレキシビリティは、「攻め」と「守り」の混合形態であって、技術革新や産業転換に対応する内的フレキシビリティと雇用や賃金の外的フレキシビリティとを効率的に統合しており、それを可能としている構造が「階層化された市場・企業ネクサス」であることが示された(植村=海老塚)。そこで企業内福祉が中心であり、その問題点が指摘され、公的福祉サービスと市場による福祉サービスの適切な混合形態の新たな創設が検討された(平野)。 (IV)以上の分析にふまえて、日本型資本主義の調整様式と蓄積体制の全体的構図が与えられた。特に、日本における企業社会と市民社会の関連が問われ、日本固有のインセンティブ・システム(「インセンティブに基づく参加」)が検討されるとともに、勤労者を包み込むマクロ的環境が示された(山田)。また、そのもとでマクロ経済的には、高度成長期は設備投資(利潤)主導型成長パターンを示し、70年代以降は輸出主導型成長パターンを示したことが、計量経済学的に析出された(植村)。
|
Research Products
(38 results)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "企業社会と市民社会-トヨティズム日本をこえて" 経済評論. 41(8). 48-51 (1992)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "現代資本主義論" 経済学史学会編『経済学史』九州大学出版会. 175-179 (1992)
-
[Publications] Toshio YAMADA: "Heurs et malheurs du mode de regulation japonais" Mondes en developpement. 20. 159-166 (1992)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "経済発展とレギュラシオン" 山之内靖他編『分岐する経済学』岩波書店. 169-209 (1993)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "レギュラシオン理論の動向と問題点" 日仏経済学会Bulletin. (15). 103-106 (1993)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "日本型資本主義と企業主義的調整" 現代思想. 21(13). 166-175 (1993)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "企業社会と市民社会" 平田清明他『現代市民社会と企業国家』御茶の水書房. 47-73 (1994)
-
[Publications] T.YAMADA/Y.INOUE: "La theorie de la regulation au Japon(forthcoming)" La lettre de la regulation. (11). (1994)
-
[Publications] Yasuro HIRANO: "Relation industrielle et systeme de salaire au Japon" Mondes en developpement. 20. 17-20 (1992)
-
[Publications] 平野 泰朗: "戦後日本の経済成長と賃労働関係" ボワイエ・山田編『危機-資本主義』藤原書店. 243-280 (1993)
-
[Publications] 平野 泰朗: "資本蓄積論とレギュラシオン・アプローチ" 思想. (830). 46-62 (1993)
-
[Publications] 平野 泰朗: "福祉サービスにおける制度と市場の問題(発表予定)" 『制度・市場の展望』昭和堂. (1994)
-
[Publications] Yasuro HIRANO: "Une economie de partage a moyen terme(forthcoming)" Japon in extenso. (31). (1994)
-
[Publications] 都留 康: "春闘における産業間賃金波及効果の変化" 経済研究. 43(3). 214-224 (1992)
-
[Publications] Tsuyoshi TSURU: "Wage Spillovers under the Spring Offensive System in Japan" Mondes en developpement. 20. 21-29 (1992)
-
[Publications] 都留 康: "労働組合組織率はなぜ低下したか" JILリサーチ. (15). 30-33 (1993)
-
[Publications] 都留 康: "日本における労働組合組織率低下の規定要因" 経済研究. 45(1). 53-68 (1994)
-
[Publications] 都留 康: "労働組合の存在意義が問われている" 労働教育情報. (16). 1-5 (1994)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "現代資本主義分析への導入路" いいだ/山田編『アフター・フォーディズムと日本』御茶の水書房. 338-349 (1992)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "アフター・フォーディズムと「日本型」経済システム" 月刊フォーラム. 4(3). 27-35 (1993)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "日本型経済システムの「制度」分析:レギュラシオン理論の視点から(発表予定)" 経済学研究. 59(3/4). (1993)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "現代制度主義経済学ノート(発表予定)" 経済学研究. 59(5/6). (1993)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "<制度の経済学>と現代経済学の革新(発表予定)" 浜砂/細江編『現代経済学の伝統と革新』九州大学出版会. (1994)
-
[Publications] 磯谷 明徳: "分岐する現代経済学と<制度の経済学>(発表予定)" 徳山大学総研レビュー. (6). (1994)
-
[Publications] Yasuo INOUE: "L'Economie japonaise:Competitivite,exportation,globalisation" Mondes en developpement. 20. 173-181 (1992)
-
[Publications] 井上 泰夫: "レギュラシオンの政治経済学" 経済社会学会年報. (15). 94-100 (1993)
-
[Publications] Yasuo INOUE: "Trajectoires nationales d'industrialisation en Coree du Sud et de Taiwan" Japon in extenso. (32)(forthcoming). (1994)
-
[Publications] Hiroyasu UEMURA: "Growth and Distribution in the Post-war Regime of Accumulation:A Theory and Realities in the Japanese Economy" Mondes en developpement. 20. 135-151 (1992)
-
[Publications] 植村博恭: "レギュラシオン理論における組識と資本蓄積" 経済社会学会年報. (15). 85-89 (1993)
-
[Publications] H.UEMURA/A.EBIZUKA: "Incentives and Flexibility in the Hierarchical Market-Firm Nexus:A Prelude to the Analysis of Productivity Regimes in Japan" Japon in extenso. (31)(forthcoming). (1994)
-
[Publications] 植村博恭: "戦後蓄積体制における成長と分配-日本の経験" 日仏経済学会Bulletin. (16)(発表予定). (1994)
-
[Publications] 植村博恭: "制度と経済パフォーマンス-ケンブリッジ経済学の展開" 徳山大学総研レビュー. (6)(発表予定). (1994)
-
[Publications] 山田 鋭夫: "レギュラシオン理論-経済学の再生" 講談社, 192 (1993)
-
[Publications] R.ボワイエ/山田鋭夫編: "レギュラシオン・コレクション1:危機-資本主義" 藤原書店, 319 (1993)
-
[Publications] R.ボワイエ/山田鋭夫編: "レギュラシオン・コレクション2:転換-社会主義" 藤原書店, 365 (1993)
-
[Publications] R.ボワイエ 井上泰夫訳: "第2の大転換:EC統合下のヨーロッパ経済" 藤原書店, 286 (1992)
-
[Publications] マーグリン/ショアー編 磯谷/植村/海老塚監訳: "資本主義の黄金時代:マルクスとケインズと超えて" 東洋経済新報社, 326 (1993)
-
[Publications] R.ローソン 植村博恭他訳: "構造変化と資本主義の調整(発表予定)" 学文社, (1994)