1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04305004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 明 東京大学, 教養学部, 教授 (10012460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 明彦 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (30163497)
木間 正道 帝京大学, 文学部, 助教授 (80215300)
若林 正丈 東京大学, 教養学部, 助教授 (60114716)
中川 昌郎 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (20175491)
平野 健一郎 東京大学, 教養学部, 教授 (40012463)
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Keywords | 社会主義市場経済 / 開発独裁 |
Research Abstract |
平成4年度の研究は、中国の章治経済改革の現状を把握することに重点をおいた。たまたま昨年10月には、中国の執政党である中国共産党が第14回党大会を開き、中国の改革・開放を加速することを決め、さらに社会主義市場経済システムの樹立を打ち出した。社会主義市場経済論を打ち出した背後には、計画と市場はともに経済的な手段にすぎず、社会主義と資本主義を区別する本質的なものではない、という認識がある。しかし、中国経済の実態は、中央の指令的目標にしたがって生産する計画経済の、市場経済への移行が進みつつある。特に、消費の分野では、その傾向が顕著で、穀物価格も市場で決まるところが、増している。糧票(食料キップ)は廃止の方向に向かっている。また、発展を続ける私有企業の中には、赤字に悩む国営企業の吸収合併を進めていることろもある。しかし、問題は経済改革と政治改革の関係にある。中国では「小政府、多服務(小さい政府、多いサービス)」というスローガンが、かかげられており、市場経済化の進展に伴い、巨大化した政府機構をスリムにすることをめざしている。しかし、これは行政機構改革であり、政治の民主化とはいえない。中国指導部は、経済発展のためには政治的安定が必要である。という論理で、政治システムの改革にとりくむことを避けており、国家安全法の制定など、秩序維持のための法制度の整備を急いでいる。こうした、政治的には引き締めを強化しつつ、経済発展をはかる方式は、台湾やシンガポールの歩んだ道に似ている。政治的民主化の課題はおきざりにして、開発独裁型の国づくりを進めつつある、といえよう。今後は、本年度の研究で得られた。中国の政治経済改革に関する知見をもとにして、台湾やシンガポールを経験と比較しつつ、中国の動向についての研究をより深めていきたい。
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[Publications] 石井 明: "中国は内政干渉を排し、全方位経済外交を強化" 世界週報. 第73巻第44号. 26-29 (1992)
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[Publications] 石井 明: "中国からみた今後日本の進路" 日中経済協会会報. No.229. 29-34 (1992)
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[Publications] 石井 明: "変わりゆく北京" 学士会会報. 第799号. 25-29 (1993)
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[Publications] 石井 明: "中国東北の「深せん」をめざしてー吉林省琿春市紀行" 外交フォーラム. 第53号. 21-27 (1993)
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[Publications] 若林 正丈: "台湾政治にみる「歴史の重荷」立法院議員選挙の結果から" 外交フォーラム. 第53号. 17-20 (1993)
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[Publications] 高木 誠一郎: "ポスト冷戦構造と中国外交の「新段階」" 国際問題. No.394. 18-32 (1993)