1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04402009
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
蟻川 達男 東京農工大学, 工学部, 教授 (90011543)
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Keywords | カイラル生体分子 / カイラル対称性の破れ / パリティの破れ / 非平衡の非線形科学 / 軌道電子のヘリシティ / レーザー・フォトリシス / 陽電子ラジオリシス / パーフェクトロン |
Research Abstract |
生体アミノ酸のカイラリティがなぜL型だけに偏ったのか、その機構を解明するため、アミノ酸にかんするフォトリシス実験、ラジオリシス実験、シミュレーション実験、オリエンテーション実験を、パーフェクトロンを用いて系統的且つ相補的に行なってきた。本年度は当初の実施計画にしたがい、これらの実験を遂行するために必要な新しい技術開発を以下のようにすすめた。 (1)レーザー脱離型超音速アミノ酸分子線源の開発:フォトリシス実験をはじめ、あらゆる実験に振動温度、回転温度まで十分冷えたアミノ酸の超音速分子線が必要になる。しかし、アミノ酸は不揮発性であるため直接的に超音速ノズル・ビームにすることができない。まずアミノ酸を加熱して気化し、キャリヤー・ガスに混入して一緒に超音速にするビーム・シード法が用いられた。ただ加熱しただけではアミノ酸が熱分解してしまうので、熱緩和をするまえにCO_2レーザーでアミノ酸を熱脱離する方法をとり成功を修めた。本研究のために開発した画像粒子分光装置を用いてビームの速度分布を測定したところマッハ数20以上の低温ビームが得られた。わが国としては他に例はない。現在、ビーム強度の増強を計り、アミノ酸分子のクラスタリング実験を行っている。 (2)可変波長のVUV光源の開発:地球原始大気からアミノ酸分子などが化学進化する過程を調べるシミュレーション実験には、UV〜VUV領域の可変波長光源が必要となるが、特にVUVにはレーザーのような手軽な光源が得られない。そこで、通常の可視光レーザーを基本波に用い、希ガスセル中での非線形光学効果を利用して、波長100nm領域の可変波長VUV光を得る技術開発に成功した。これはシミュレーション実験のみならず、円偏光VUVにより放出される光電子の偏極率を測るフォトリシス実験にも威力を発揮し、軌道電子のヘリシティ分布測定には不可欠なものである。 (3)化学進化過程の計算機シミュレーション:パリティを破るPNC効果を有利因子とし、太陽光が円偏光している効果と反応の熱力学的揺らぎの効果を標準正規乱数として取り入れたランジュバン方程式を約6000年分を計算し、化学進化過程に関する新しい知見を得た。
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