1992 Fiscal Year Annual Research Report
形質転換成長因子-βスーパーファミリーによる生殖機能のパラクリン調節に関する研究
Project/Area Number |
04404018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 茂実 東京大学, 農学部, 助手 (80219526)
西原 真杉 東京大学, 農学部, 助教授 (90145673)
塩田 邦郎 東京大学, 農学部, 助教授 (80196352)
舘 鄰 東京大学, 農学部, 教授 (30011711)
林 良博 東京大学, 農学部, 教授 (90092303)
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Keywords | TGF-β / アクチビン / インヒビン / フォリスタチン / 卵巣 / 初期胚 / 下垂体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、形質転換成長因子(TGF)-βファミリー成長因子の、生殖機能系におけるパラクリン調節機構の本態を、発生工学・分子生物学・組織化学などの広い角度から解析することにある。本年度に得られた研究成果を以下にまとめる。1)研究分担者らのこれまでの研究により、アクチビンがマウス初期胚の分割を高率に促進すること、また、アクチビンが卵管上皮・初期胚に存在することを免疫組織化学を用いて明らかにしてきた。本年度は、主にreverse transcription-polymerase chaion法を用いて、アクチビンおよびその受容体の遺伝子発現を解析した。その結果、初期胚および卵管上皮にアクチビンのmRNAが発現していることが明らかとなった。さらに、初期胚にはアクチビン受容体遺伝子も発現していることが示された。これまでの研究成果と本年度の研究成果より、アクチビンは、初期胚分割を促進するオートクリン因子であり、また、卵管由来のアクチビンは初期胚におけるアクチビンのオートクリン作用を確実に発現させるためのパラクリン因子として機能していることが示唆された。2)研究分担者らのこれまでの研究により、プロラクチンによる齧歯類黄体の機能維持作用が抗TGF-β抗体により消失すること、また、黄体内の抗TGF-β抗体陽性細胞の多くがマクロファージであることから、TGF-βがプロラチクチン作用発現を仲介するマクロファージ由来のパラクリン因子であることが示唆されていた。本年度は、ウエスタンブロット法を用いて、黄体におけるTGF-βの発現様式を検討した。その結果、黄体においてプロラクチンにより発現量が増加するのはtype2TGF-βであり、type1TGF-βはプロラクチンにより発現量が影響を受けないことが明らかになった。これらの成果より、プロラクチン作用を仲介するマクロファージ由来のパラクリン因子は、type2TGF-βであることが示唆された。3)研究分担者らのこれまでの研究により、アクチビンが下垂体のFSH産生細胞の分化促進作用を有することが明らかになっていた。一方、下垂体組織にはfolliculo-stellate(FS)細胞と呼ばれる細胞が存在することが知られているが、その生理学的役割は明らかにされていなかった。本年度の研究により、FS細胞の培養上清にはアクチビンのFSH産生細胞分化促進作用を抑制する活性が存在することが明らかとなった。さらに、アクチビン結合蛋白質であるフォリスタチンに対する抗体の存在下では、この培養上清の活性が消失することから、FS細胞由来のフォリスタチンがアクチビン作用を抑制的に調節するパラクリン因子として機能していることが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Matsuyama,K.Shiota,C.Tachi,M.Nishihara,M.Takahashi: "Splenic macrophages enhance prolactin and luteinizing hormone action in rat luteal cell cultures." Endocrinologia Japonica. 39. 51-57 (1992)
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[Publications] K.Yamanouchi,S.MatsuyamaM.Nishihara,K.Shiota,C.Tachi,M.TaKahahsi: "Splenic macrophages enhance prolactin-induced progestin secretion from mature ret granulosa cells in vitro." Biology of Reproduction. 46. 1109-1113 (1992)
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[Publications] S.Saito,S.Matsuyama,K.Yamanouchi,M.Takahachi: "Changes in ratios of phagocytotic macrophages in the splenic adherent cells during estrous cycle and pseydopregnancy." Journal of Reproduction and Development. 38. 115-120 (1992)
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[Publications] K.Ogawa,M.KurohmaruK.Shiota,M.Takahachi,Y.Hayachi.: "Immunoreactive βA subunit of inhibin/activin is present in cytoplasmof rat spermatogenic cells." Journal of Reproduction and Development. 38. 5-9 (1992)
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[Publications] R-Z.Lu,KShiota,C.Tachi,M.Takahachi.: "Histochemical demonstration of activin/inhibin βA-,βB-and α-subunits in early embryos and oviducts of different strains of mice." Journal of Reproduction and Development. 38. 79-90 (1992)
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[Publications] T.Katayama,K.Shiota,H.Sugino,M.Takahashi.: "Paracrine effects of folliculo-stellate cells on the growth factor-like action of activin in anterior pituirary cultures." Endocrinologia Japonica. 39. 289-297 (1992)