Research Abstract |
現在,橋梁でのケーブル構造の用途は,吊り橋,斜張橋,ニールセン橋,ランガー橋として用いられるなど幅広く,その必要性は益々高まっている。特に,斜張橋の長大化にともない,信頼性設計と架設工事,維持管理の観点から,クリープ・リラクセーション等の長期時間的挙動に対する対策を検討する必要性が高まっている。検討課題としては,ケーブルの合理的定着法,ケーブルの合理的な安全率,ケーブル張力の合理的管理法が挙げられるが,ケーブル・ソケット一体構造の時間依存特性,すなわちケーブル本体,アンカー部のケーブル付着強度・抜け出し特性を明らかにする必要がある。本研究では,ケーブル構造の時間依存特性に関連して,ケーブル定着部(ソケット)の時間依存性に重点を置き調査研究を行い,ケーブル構造の維持管理法の確率を主な目的としてきた。 平成4年度には,境界面での滑り・剥離挙動をより実際的に取り扱うため,軸対称2次元個別要素法によるケーブル素線の抜け出し解析を行い,素線の抜け出し強度が,素線と鋳込み金属の付着に大きく依存し付着が切れた後の付着劣化および側方からの拘束度に左右されることを明らかにした。一方では,平成4年度および5年度の実験結果からその妥当性が確認されたものの,実際のケーブル定着構造が3次元構造となっているため,多数のケーブルの相互関係を考慮した3次元解析を行う必要があった。したがって,本年度においては,3次元の個別要素解析プログラムを開発するとともに,立体的な定着構造におけるケーブルストランドの抜け出し挙動を明らかにした。素線径の2倍程度の空間があれば,境界面での破壊が非常に薄い層内で生じるため,お互いに影響を及ぼすことなく,ストランド本数分の全付着面で付着強度を期待できることがわかった。また,ケーブル・ソケット一体構造の時間依存特性の数理モデルを用いてケーブル系橋梁の経時挙動予測を行い,収集した既設の斜張橋の経時挙動に関するデータと経時挙動解析結果を比較検討し,今後のケーブル張力管理のあり方について検討を行った。
|