Research Abstract |
1.現在各地から採集して保存中のツチガエルのうち,性決定様式がZW型で性染色体が識別できる弘前,新潟,金沢の3集団とXY型で性染色体が識別できない熊野集団,性染色体が識別できる浜北集団の間で正逆雑種を作成し,飼育中のカエルについて性染色体の分析を行なった。その結果,性決定様式がZW型である弘前集団とXY型である熊野集団の間の雑種ではZY,ZXはすべて雄で,WX,WYはすベて雌であった。また,ZW型である新潟集団とXY型である浜北集団の間の雑種の染色体については現在分析中であるが,この場合は,ZYは雄,ZXは雄または雌,WXは雌,WYは雌が多いが雄も生じることがわかった。 2.性染色体が識別できない熊野集団の幼生にテストステロンを注射したところすべてが雄になったので,これらの雄と正常の雌とを交配して次代の性比を調べた。その結果,雄の半数からはほぼ同数の雌雄ができたが,残りの半数からは雌だけを生じたので,熊野集団のツチガエルはXY型であることが確かめられた。これに対して,弘前集団の幼生にテストステロンを注射したところ,性転換は全然起こらなかった。 3.わが国の17地点から採集したツチガエルについて,核型,C-band型,LR-band型の分析を行なった結果,札幌,秋田,新潟,金沢,堅田の5集団と福島集団の大部分では,弘前集団と同様に雌の第7染色体がZW型で,次端部着糸(ST)型と中部着糸(M)型とのヘテロであるが,福島集団の一部と茨城,前橋,町田,伊勢原,江津,熊野,長与の7集団では,広島集団と同様に性差がなく,ST型のホモであることがわかった。他方,静岡県の浜北,都田,米津の3集団と鳥羽集団では,雄がM型とST型のヘテロであり,雌がM型のホモであることがわかった。 4.関東地方の4集団のST型は他集団のST型と逆位関係にあり,M型は関東のST型の逆位によって生じたものであることがわかった。
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