1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04454230
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
桂 秀策 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10048233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新津 ひさえ 岩手医科大学, 医学部, 助手 (80128933)
熊谷 礼子 岩手医科大学, 医学部, 助手 (30118294)
中屋敷 徳 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10146029)
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Keywords | ヒト / 脳死 / 脳脂質 / 変性 |
Research Abstract |
脳死が起きて、その死亡時刻を決定することは医学的にも社会的にも非常に重要なことである。本研究では、脳死後の経過時間を推定するための方法を検討し、脳死した時にみられる脳組織の変化のうち、脂質成分を指標として取り上げ、その変化と死後経過時間との関係を調べた。 脳の組織は剖検時に毒物検査用に採取して冷凍保存したものの一部を使用した。脳組織の白質と灰白質から各別に脂質をFolch法すなわち chloroform‐methanolによって抽出した。リン脂質の組成は順相の薄層クロマトグラフィー(TLC)と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、また各リン脂質の脂肪酸組成はTLCプレートからの抽出物をメチルエステル化してガスクロマトグラフィー(GC)によって検査した。脳組織片を部位別に4℃と室温に静置して、経時的にリン脂質と個々のリン脂質分子の脂肪酸を調べた。その結果、白質と灰白質いずれにおいても、リン脂質のうちホスファチジルコリン(PC)の減少が最も著明だった。そしてPCが分解して生じたとみられるリゾホスファチジルコリンが確認され、定量はしていないが遊離脂肪酸も増加していた。ホスファチジルエタノールアミン(PE)とPCについて脂肪酸組成をみたところ、融解直後の状態でみられる脂肪酸のピークもみられたが、その他に一般に多く存在する炭素数16ないし18個に相当する脂肪酸のピークよりも保持時間の早いピークと遅いピークが増加していた。同定は完了していないが、保持時間の早いピークには炭素数の少ない脂肪酸等が、遅いピークは中性脂肪等のリン脂質とは違うものが混じているのかもしれない。脂質は死後にまだ活性を残している組織中の酵素等によってリン脂質クラスで分解されるだけでなく、遊離になった脂肪酸も変化しているものとみられ、これらを指標にして死後経過時間を推定できる可能性がある。例数等を増やして死後の経過時間との関係について検討しているところである。
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