1992 Fiscal Year Annual Research Report
閉塞性黄疸肝切除における虚血再潅流障害の病態と限界
Project/Area Number |
04454329
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
水本 龍二 三重大学, 医学部, 教授 (00025561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 嘉文 三重大学, 医学部, 講師 (00126963)
野口 孝 三重大学, 医学部, 助教授 (40144258)
川原田 嘉文 三重大学, 医療技術短期大学部, 教授 (40024814)
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Keywords | 黄疸遷延 / 機能的肝切除限界 / 肝流入血行遮断 / フリーラジカル / 網内系機能 / エンドトキシン / フリーラジカルスカベンジャー / 肝微細構造 |
Research Abstract |
雑種成犬を用い、胆嚢摘出兼総胆管結紮切離を行って閉塞性黄疸を作成し、その2週後に全肝領域の肝流入血行遮断(肝動脈・門脈同時遮断10分)を行って以下の実験群に分類した。すなわち、A群:門脈ー下大静脈バイパス下肝流入血行遮断後40%肝切除兼総胆管十二指腸吻合による減黄術施行群(n=2)、B群:バイパス非施行下肝流入血行遮断後40%肝切除兼減黄術施行群(n=12)、C群:肝流入血行遮断を伴わない40%肝切除兼減黄術施行群(n=8)の3群に対し、生存率や術後肝機能の推移、血中エンドトキシンやKupffer細胞機能を反映するβ-N-acetylbexosamini-dase(β-NAH)の推移の他、肝組織中過酸化脂質やsuperoxide dismutase(SOD)活性を測定し、肝微細構造の変化と比較検討した。 1.7日生存率:A群75%、B群25%、C群75%とB群はAC群に比し有意に低率で、肝不全が主な死因であった。2.肝機能:肝流入血行非遮断のC群の肝障害度が最も軽度であり、肝流入血行遮断後肝切除のA、B群では門脈ー下大静脈バイパス施行のA群の方が肝障害が有意に軽度であった。3.エンドトキシン血症:B群では高エンドトキシン血症を認めたのに対し、他の2群ではエンドトキシン値が有意に低値を示しており、門脈うっ血によるエンドトキシンが虚血解除後大量に肝類洞に流入するという成績であり、β-NAHもB群で最も低値を示した。4.フリーラジカル関連物質:B群で肝組織中の過酸化脂質が最も高く、これに対してSOD活性は最も低値を示した。5.肝微細構造:Kupffer細胞の腫大はA、B、C群で同様に認められるが、B群でのKupffer細胞系粒体は増加していた。 以上、閉塞性黄疸肝流入血行遮断後肝切除の病態は、門脈うっ血によるエンドトキシンの肝への流入に基づいて、Kupffer細胞機能は活性化しフリーラジカルを産生するとともに、これが再潅流障害を強く惹起して肝細胞機能を増悪させ、残存肝機能を不可逆的にするものと考えられた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Ryuji Mizumoto: "Surgical anatomy of the hepatic hilum with special reference to the caudate lobe" World J Surg.12. 2-10 (1989)
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[Publications] 水本 龍二: "臨床医学の展望ー肝、胆道、膵外科" 日本医事新報. 3380. 15-21 (1989)
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[Publications] 水本 龍二: "胆道癌の治療成績ー進行癌に対する拡大手術を中心として(アンケート集計結果から)" 胆と膵. 11. 869-882 (1990)
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[Publications] 川原田 嘉文: "肝予備能検査" 外科治療. 66. 559-563 (1992)
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[Publications] 野口 孝: "胆管細胞癌をめぐる諸問題ー肝内胆管癌、治療" 肝胆膵. 24. 249-259 (1992)
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[Publications] 小倉 嘉文: "胆道癌" 肝胆膵. 25. 739-747 (1992)
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[Publications] 水本 龍二: "胆道癌:診断と治療の進歩「消化器病セミナー」" へるす出版, 18 (1992)
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[Publications] 水本 龍二: "「図説臨床[癌]シリーズNo3.肝癌」胆菅細胞癌の臨床" メジカルビュー社, 8 (1992)