Research Abstract |
雑種成犬を用い,胆嚢摘出兼総胆管結紮切離を行って閉塞性黄疸を作成し,2週後に肝流入血行遮断(肝動脈・門脈同時遮断:以下虚血)を行って以下の実験群に分類した.すなわち,I群:虚血10分+40%肝切除+減黄術,II群:I群にCoQ10及びSM-SOD投与群,III群:門脈・大腿静脈バイパス下虚血10分+40%肝切除+減黄術,IV群:バイパス下虚血20分+40%肝切除+減黄術を作成し生存率や術後肝機能の推移,血中エンドトキシン(Et)やKupffer細胞機能を反映するβ-N-acetylhexo-saminidase(β-NAH)やPhagocytic index(PI),フリーラジカル関連物質である肝組織中過酸化脂質(LPO)やsuperoxide dismutase(SOD)活性を測定し,肝の組織学的変化を比較検討した. 1.1週間生存率:I群23%,II群CoQ10投与77%,SM-SOD投与69%,III群70%,IV群36%とII,III群では有意な改善を認めた.2.肝機能:I,IV群では肝機能障害は高度であったが,II,III群では軽度であった.3.血中Et:I群では門脈血・末梢血とも高Et血症を認めたが,II群では門脈血のみEtの上昇を認め,II,III群では上昇は認めなかった.4.Kupffer細胞機能:これをKupffer細胞機能からみてみるとβ-NAHはI,IV群で再潅流3時間目より上昇を認め,PIは全群とも再潅流後30分では上昇するもののII,III群のみKupffer細胞機能は24時間目まで保たれており,I,IV群では3時間目よりKupffer細胞機能は低下していた.5.フリーラジカル関連物質:I群でLPO上昇し,SODは低下するものの,II,III群では変動はなく,特にSM-SOD投与群では,SODは術前より高値で推移した.IV群ではI群と同様に推移した. 以上,閉塞性黄疸肝流入血行遮断兼肝切除の病態は,門脈うっ血によるEtの肝への流入により,Kupffer細胞を活性化し,フリーラジカルを産生し,再潅流障害を強く惹起して肝細胞機能障害を増悪させ,またバイパス下のうっ血を解除した状態でも虚血時間の延長とともにKupffer細胞に関連したフリーラジカルの産生を認め,残存肝機能を不可逆的なものにすると考えられた。
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