1992 Fiscal Year Annual Research Report
体静脈ー肺動脈吻合術後の肺動静脈瘻発生に関する臨床的研究
Project/Area Number |
04454345
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
島崎 靖久 大阪大学, 医学部, 講師 (60116043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 拓也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
井川 誠一郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
川田 博昭 大阪大学, 医学部, 助手 (40234075)
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Keywords | フォンタン手術 / 凝固線溶因子 / 肝機能 / 肺動静脈瘻 |
Research Abstract |
(目的) 上大静脈ー肺動脈吻合術後には約30%に肺動静脈瘻が生ずると報告されているが、フォンタン手術後での発生は極めて希である。何れも、肺動脈圧は低値であり、しかも拍動性に乏しい。一方、肝硬変患者にも、肺動静脈瘻の発生をみたとの報告もある。肺と肝は共に、多くの体液性、内分泌性、代謝性機能を有している。肝臓由来の何等かの因子と肺血管の間の重要な関連に障害が生ずると、肺内での肺動静脈瘻が発生するのかも知れない。そこで、我々は肝機能の異常と肺動静脈瘻の発生に関係があるのではないかと考え、肝機能検査上最も敏感な凝固線溶系及び一般肝機能について検討した。 (対象と方法) 手術時年齢2-19(平均7.2)才のフォンタン術後9例を対象とした。これらの例は何れも肺動静脈瘻を形成していない。4例で術前と術直後1ヵ月までの急性期に、また、5例では術後7-58ヵ月の遠隔期に凝固線溶因子並びに一般肝機能を測定した。凝固線溶因子としてProtein C,Protein S,TAT,PICを測定した。一方、肺動静脈瘻の存在について、経食道超音波検査にて検索した。 (成績) Protein C,Protein Sは術前は正常値であったが、術後経時的に低下し、術後1ヵ月時には各各54±5%,5.1±0.9mcg/ml(平均±標準偏差)であった。TAT,PICは共に高値であった。遠隔期には、Protein Sは全例低値(5.1+3.0mcg/ml)であったが、Protein Cは2例で低値(35,53%)、3例で正常値(83+6%)であった。TAT,PICは正常値であった。一般肝機能との関係は明かではなかった。全例で肺動静脈瘻を認めなかった。 (結語) フォンタン手術後の凝固線溶因子について検討した。フォンタン術直後には全例に、遠隔期においても約半数に凝固線溶系の異常が認められた。このことは、フォンタン手術後においては肝機能は正常ではない事を示した。しかし、これらの例では肺動静脈瘻は発生していなかった。
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