1992 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠・産褥期の骨代謝・骨塩量に関する基礎的・臨床的研究
Project/Area Number |
04454423
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永田 行博 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30038806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古謝 将一郎 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (40231310)
堂地 勉 鹿児島大学, 医学部, 講師 (60150413)
有馬 直見 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 講師 (90151183)
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Keywords | 妊娠 / 産褥期 / 骨代謝 / 骨塩量 / 授乳 / 非授乳 / ビタミンD |
Research Abstract |
〔目的〕妊娠中母体から胎児へ約30gのカルシウム(Ca)が移行し、さらに授乳により約220mg/日のCaが失われるが、妊娠及び産褥期の母体骨代謝についての研究は不十分で現在まで詳細は不明である。我々は、(1)妊娠中から産褥期の長期にわたって妊婦・褥婦の骨代謝について追跡し、骨塩量がどのように変化するかを観察し、さらに(2)動物実験による基礎的研究でその対策を立てることを目的とした。〔結果〕(1)妊娠中の骨塩量は、妊娠初期から末期にかけて僅かに減少傾向を示したが、有意差は認められなかった。しかし、産褥期になると産褥1カ月ですでに有意に骨塩量は減少し、6カ月後は約6.3%減少した。一方、非授乳婦での骨塩量減少は見られなかった。(2)さらに9カ月まで授乳を続けたところ、12カ月後まで依然として骨塩量は減少しつづけた。その後骨塩量は回復の傾向を見せたものの、24カ月後もなお産褥5日のそれの5.43%の減少であり、完全に回復していなかった。(3)ラットの妊娠中の骨塩量は増加したが、対照の非妊娠ラットの増加率8.5%に比べて5.6%であり有意に低かった。そこで、胎仔数を半減させて検討したところ骨塩量の増加率は6.7%であり、胎仔数が骨塩量に影響することが判明した。(4)産褥期のラット骨塩量は3週間後に授乳群23.2%、非授乳群14.4%と減少したが、その後授乳中止で急速に回復した。(5)授乳中に活性型ビタミンDを投与しつづけたところ、骨塩量減少率は有意に低下した。(6)いづれの実験でも骨代謝指標に異常はみられなかった。〔結論〕かなり長期間にわたって、産褥期の骨塩量減少は回復しないことが判明した。しかし、その間になんらかの対策を取れば、その減少率は低下させられることも示唆された。
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[Publications] 松元 勇,中村 佐知子 吉満 伸幸,上田 哲平: "卵巣摘出後の骨量減少に対する治療法の検討" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. S-310- (1992)
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[Publications] 野口 慎一,古謝 将一郎 有馬 直見,永田 行博: "授乳の骨代謝への影響に関する研究" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. S-363- (1992)
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[Publications] 堂地 勉,古謝 将一郎,山元 慎一,沖 利通,野口 慎一,永田 行博: "体重減少が骨代謝に及ぼす影響に関する研究" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. S-448- (1992)
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[Publications] 永田 行博,古謝 将一郎: "自然閉経後の骨代謝" Bone. 6. 81-86 (1992)
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[Publications] 永田 行博: "高令婦人の内分泌変化特性" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. N-67-N-70 (1992)
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[Publications] 松元 勇,大西 英資,上田 哲平: "授乳の骨塩量に及ぼす影響ー長期追跡例の検討" 日本産科婦人科学会雑誌. 45. S-248- (1993)