1992 Fiscal Year Annual Research Report
口腔前癌病変の癌化過程におけるサイトカインとその遺伝子発現の変化
Project/Area Number |
04454511
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
南雲 正男 昭和大学, 歯学部, 教授 (70013993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 正泰 昭和大学, 歯学部, 講師 (50193743)
大島 修 昭和大学, 歯学部, 講師 (50167300)
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Keywords | 癌化 / サイトカイン / ランゲルハンス細胞 / HLA-DR抗原 / 癌遺伝子 / ras / myc |
Research Abstract |
IL-1、IL-6、TGF-αなどのサイトカインが腫瘍の発生と維持に関与していることが示唆されている。一方、ランゲルハンス細胞(LC)も上皮における免疫応答の発現に重要な役割を担っており、最近では腫瘍免疫への関与がいわれている。さらにIFN-γ、TNF-αなどのサイトカインがLCのHLA-DR抗原発現を制御しているとの報告もみられる。そこで、前癌病変からの悪性化症例および癌組織におけるIL-1、TFN-γ、TGF-α、INF-αなどのサイトカインの局在を検討するとともに、LCおよびHLA-DR抗原の発現との関連を検索した。その結果悪性化症例では、癌化前にはTGF-αが認められなかったが、癌化後には深部増殖先端部に局在がみられた。それに対し、INF-γは癌化前には棟細胞上方にみられたが、癌化後の標本ではその局在が認められなかった。また癌組織では種々のサイトカインが実質、間質に染色されたが、それらの局在は症例によってさまざまであった。LCとサイトカインの局在との間には、悪性化症例および癌症例とも関連はみられなかった。しかし、HLA-DR抗原とサイトカインとの関連において、細胞浸潤が強くかつIFN-γ陽性の浸潤細胞が多い部位に近接した上皮にHLA-DR抗原陽性のLCが多く認められた。 一方、培養細胞の増殖を抑制し分化の誘導を促進する作用をもつTNF-αを用い、口腔癌由来培養細胞(NAcell)の増殖と癌遺伝子の関連を検討したところ、TNF-αによってNAcellの増殖が抑制され、その際ras、myc遺伝子のmRNAの発現が抑制されることが判明した。この結果からrasおよびmyc遺伝子が癌の発生・増殖に関与する可能性が示唆された。 以上の結果から、サイトカインはHLA-DR抗原の発現の制御および癌遺伝子の制御をとおして癌化の過程および癌の維持に関与する可能性が推測される。
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[Publications] 中村 雅子 他: "前癌病変より悪性化をきたした9症例" 第2回口腔粘膜疾患研究会. (1992)
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[Publications] 堀 雅人 他: "ヒト口腔癌由来培養細胞(NAcell)に対するTNFおよびTNFとTGF-βあるいはIFN-γの併用の効果" 第37回日本口腔外科学会総会. (1992)
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[Publications] 山口 真吾 他: "各種ヒト癌由来培養細胞のスーパーオキシド感受性のヒ" 第37回日本口腔外科学会総会. (1992)
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[Publications] 山口 真吾 他: "各種ヒト培養細胞のSOD活性とスーパーオキシドによる傷害性について" 第47回日本口腔科学会総会. (1993)
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[Publications] 中村 雅子 他: "前癌病変よりの悪性化症例におけるランゲルハンス細胞およびそのHLA-DR抗原発現の変化" 第3回口腔粘膜疾患研究会. (1993)
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[Publications] 堀 雅人 他: "TNFおよびTGF-βによる口腔癌由来培養細胞のrasおよびmyc mRNA発現の抑制" 第52回日本癌学会総会. (1993)