1993 Fiscal Year Annual Research Report
口腔疾患における線維芽細胞成長因子の唾液発現レベルの動態に関する基礎的研究
Project/Area Number |
04557077
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
朔 敬 新潟大学, 歯学部, 教授 (40145264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
程 珸 新潟大学, 歯学部, 助手 (40207460)
鈴木 誠 新潟大学, 歯学部附属病院, 講師 (50107778)
辰巳 政弘 日本鋼管株式会社技術開発本部, 主任
佐々木 一 明治乳業細胞工学センター, 主任
中島 民雄 新潟大学, 歯学部, 教授 (10014010)
原 耕二 新潟大学, 歯学部, 教授 (20018419)
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Keywords | 線維芽細胞成長因子 / 唾液 / 唾液腺 / ELISA / in-situハイブリダイゼーション / ウェスタンブロット / 歯周疾患 / マクロファージ |
Research Abstract |
本年度は、前年度までに検討してきた唾液中および各種腺組織中の酸性ならびに塩基性線維芽細胞成長因子(aFGF、bFGF)の同定法とそれらの性格づけを確立することを目標にした。 (1)唾液FGFレベルの検量と定性:唾液ならびに唾液腺組織FGFの定量にはELISA法(ELISAマイクロプレートリーダ使用)を利用したが、抗FGFポリクローナル抗体による間接法では5ng/mlの検出限界であった。モノクローナル抗体によるサンドイッチ法ELISAでは、0.1ng/mlの検出感度をえた。この検出感度で検索したかぎり、正常人唾液ではFGFを検出することはできなかった。歯周病患者唾液でも検出はできなかった。(2)組織内FGFの検出:癌および炎症組織においてFGFがどのように局在するのかを免疫組織化学的に検討した。この結果、癌組織内では、間質の血管内皮細胞、線維芽細胞、そして細胞外基質中に見いだされた。炎症組織内では、とくに細胞外基質中に顕著な局在をしめし、マクロファージ様の遊走細胞に強陽性反応があった。これらの免疫反応は、組織の調整法(凍結切片、パラフィン切片、パラフォルムアルデヒド(PFA)固定)によって異なり、とくに細胞外基質中の反応については今後の検討が必要である。ついで、どのような細胞が産生しているのかを調べる目的で、in situハイブリダイゼーション(ISH)をおこなった。材料は歯周炎患者歯肉を4%PFA固定しOCTコンパウンドで包埋後に液体窒素にて凍結させた後クリオスタットにて切片を作製した。プローブは、武田薬品よりラットbFGFcDNAの供与をうけ、これにジゴキシゲニンを標識しISHさせた。その結果、明らかな陽性反応は粘膜下層の血管内皮細胞にみられた。種差による影響を考慮して、既知のヒとbFGFcDNAより設計した45merのオリゴヌクレオチドを合成して検討中である。免疫組織化学による結果から、マクロファージに陽性所見が認められたので、これらbFGF陽性細胞の性質を知るために歯肉の炎症組織におけるS-100蛋白質、CD68、α-1アンチキモトリプシン、リゾチーム、カテプシンD、HLA-DR等のマクロファージマーカの局在と比較検討したところ、bFGF陽性細胞は特異なマクロファージ系細胞であることが判明した。(3)FGF定量の臨床応用:臨床検査へのFGF定量の導入は未開拓であるが、少なくとも、唾液を検査材料とすることの利点については再検討が必要であることを確認した。
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