1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04660233
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
宇佐美 繁 宇都宮大学, 農学部, 教授 (80134261)
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Keywords | 直系三世代家族の変容 / 土地持ち非農家 / 前進的農地流動化 / 後退的農地流動化 |
Research Abstract |
わが国における農業生産構造は,畜産部門を中心に急速に変貎しつつあるが,稲作部門における変化は鈍い。専業的に営農するための下限規模の上昇にもかかわらず,零細な家族経営が広汎に滞留したためである。兼業稲作が継続出来たのは,直系三世代家族の同居によって,男子労働力による休日の機械作業,両親による日常的な肥培管理,農繁期における家族総出による作業,といった分担が可能であったことによる。 その直系三世代家族が,形態的にも,質的にも急激に変容しつつある。形態的にみれば,家族成員の全般的な減少の下で,なお二世代夫婦同居の東北型,一世代夫婦のみとなった南方型,南方型へ急速に接近し,老夫婦だけの家族が増加している西日本型,二世代夫婦同居が崩れ始めている北海道型に分化している。質的にみれば,二世代夫婦が同居していても,若者夫婦が全く農業に関わらない傾向が強まり,実質的に夫婦単位の家族形態へと移行しはじめている。 こうした変質が激しく進んでいるところほど,農地を所有したままで非農家となる「土地持ち非農家」の形成が著るしい。この「非農家」の農地は,一方では「前進的流動化」のファンドとなり,借地型大経営形成の条件となっている。北陸,東海がその典型であり,山陽・四国ではきわめて散在的ではあるが大規模借地経営が生れている。他方では,借り手を見い出せないまま耕作放棄地となっている。山陽,四国,東山等ではそうした「後退的流動化」が主流である。
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[Publications] 宇佐美 繁: "高橋正郎編『日本農業の展開構造』 第四章 家族構成と農業構造" 農林統計協会, 319 (1992)
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[Publications] 宇佐美 繁: "『農家・農村社会の変貎と農地問題(1)』II農地「流動化」の地域性と階層性" 89 (1992)