Research Abstract |
今年度は胎盤と造血との関係の解析などを更に続けた.胎齢10,9,8日ラットの胎盤を取り出し遊離細胞化し,培養系に移した。同細胞はそのまま培養を続けた群と,1000,2000,3000Radの放射線を照射した群に分け,株化を試みた.結果は非放射線照射群では線維芽細胞様細胞が単層で付着し,肉眼で観察可能な大きさのコロニーを形成したが,3週間経過しても著しい増殖を示さず絶えてしまった.放射線照射群では1000Radの放射線照射でほとんど細胞は増殖しなかった.つまり,胎盤組織は造血刺激因子を持つがそれ自体も増殖の為に何らかの因子を必要としていることが示唆された.一方,コラゲナーゼで肝組織から遊離肝細胞を作成し,部分肝切除したラットの脾臓,唾液腺,腎被膜下などに成獣ラット肝細胞を移植すると生着し,肝組織ができた(Cell Transplant,Fujikura et al.,1994).移植肝組織における肝細胞は類洞面,毛細胆管面,接触面をそれぞれ認識するHAM2,HAM4,HAM8抗体(Anat Rec,Fujikura et al.,1993)と反応し,3つの極性を持っていた.しかし,胎仔肝細胞を移植すると3種の抗体の認識する肝組織が形成されると同時に腺様構造も認められ,胎仔期と成獣期のラット肝細胞は分化度に差があり,前者がより未分化な細胞である可能性が示唆された.また,新たにラットの18日胎仔肝細胞でマウスを免疫し,単クローン性抗体(UB-18,UB-19など)を作成した.両抗体はそれぞれB細胞系細胞,T,B細胞系細胞を認識すると同時に,共に胎仔の肝細胞とは反応しないのに8週齢の成獣ラットの肝細胞とはその細胞膜・細胞質と反応する抗体である.これらは胎仔肝細胞と成獣ラット肝細胞を識別する抗体で,胎仔肝細胞が機能的に成獣ラット肝細胞と異なっていることが示唆され,これは胎仔肝細胞が造血支持細胞としての機能を持ち合わせている可能性を示す所見と考えられた.
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