1993 Fiscal Year Annual Research Report
長期化する雲仙火山災害の地域保健医療システムのインパクトの調査研究
Project/Area Number |
04670310
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Research Institution | NAGASAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
齋藤 寛 長崎大学, 医学部, 教授 (80004901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住友 美智代 長崎大学, 医学部, 教務職員
西原 純 長崎大学, 教育学部, 助教授 (30136626)
岩田 孝吉 長崎大学, 医学部, 講師 (30203384)
守山 正樹 長崎大学, 医学部, 助教授 (10145229)
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Keywords | 雲仙火山災害 / 環境リスク / 疾病構造 / 学校保健 / 地域医療保健システム |
Research Abstract |
雲仙普賢岳が平成2年11月に198年ぶりに噴火して満3年を経過したが依然活発な火山活動を続け、住民への健康影響の出現が懸念されている。平成4年度ならびに5年度の2回にわたり、島原市内の全小中学校(小学校6、中学校4)の児童生徒4000人を対象にして、島原市学校保健会が実施した「調査表の質問項目にイエス、ノーの解答を記入するアンケート調査」を解析した。アンケート調査の結果、眼科的症状で通院している児童が非常に多いことが判明した。ほとんどの学校で有訴率は50%を超えていた。このことは児童が防塵マスク持参で登学しなければならない島原市の現状を物語っている。耳鼻咽喉科的症状は全体のおよそ3分の1が異常を訴えているが、眼科的症状の場合と異なり受診率はそれほど高率ではなかった。このことは島原半島地域の耳鼻科専門医の分布状態と密接に関係していると考えられた。呼吸器科的症状は有訴率、受診率とも一番低かった。一方において、アンケートで特に目立ったことは、家族(保護者)の自発的な記入が多かったことであった。つまり雲仙火山災害関連して、保護者たちが子供たちの健康についてどんなことを心配しているかが書き込まれていた。その多くは呼吸器疾患の発症あるいは増悪の心配であった。児童の保護者が、記入欄がもうけられていないにもかかわらず、それぞれの言葉で「子供の健康についての不安」を訴えている事実の背景には、「噴火災害が長く続く地域で暮らす成長期の子供を持つ親の不安」のあることが強く感じられた。今後の研究を、「親が子供に対して抱いている健康不安」を把握することが可能となる方法を考え、そして「一緒にその不安を考える」ということにしたい。これが本研究の総括である。またこのことが噴火災害地域の地域保健活動にもっとも求められているものであろう。
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[Publications] 西原純,斎藤寛: "雲仙火山災害の調査研究" 雲仙火山災害長崎大学調査研究グループ, 125 (1992)
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[Publications] 斎藤寛・遠藤晋介・住友美智代: "雲仙火山災害の調査研究(第2報)" 雲仙火山災害長崎大学調査研究グループ, 116 (1994)