1994 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病ウイルスの母児感染に関する研究-安全かつ適切な母乳投与のガイドラインの設定について-
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04670608
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
川上 清 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 講師 (50152921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤吉 利信 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (50173480)
北原 琢磨 鹿児島大学, 医学部, 助手 (90253880)
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Keywords | HTLV-I / 短期母乳栄養 / 長期母乳栄養 |
Research Abstract |
1)成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)キャリア妊婦より出生した児のHTLV-I感染を血清学的に検討した。1986年1月から1994年6月までに追跡児は955名となり,そのうち1歳以上で栄養法,母乳哺育期間の判明している357名を対象とした。追跡児全体のHTLV-I抗体陽性率は5.6%(20/357)であった。このうち母乳栄養児は6.7%(5/75)であり,人工乳栄養児の5.3%(15/282)と感染率に有意差はなかった。次に母乳栄養児の感染率を母乳哺育期間で検討した。6か月までの短期母乳哺育児の感染率は3.2%(2/63)であったのに対し,7か月以上母乳を哺育した長期母乳群は25.0%(3/12)と有意に高く人工乳哺育児とも有意差を認めた。短期母乳哺育児は人工乳栄養児と感染率に差はなかった。短期母乳栄養児のうちさらに3か月までで母乳をやめた群は1.9%(1/53)と感染率はさらに低かった。 2)追跡児の同胞例でのretrospective studyでは,2歳以上の247名のうちHTLV-I抗体陽性者は10.1%(25/247)であり,このうち人工乳栄養児が6.3%(2/32)に対し母乳栄養児は10.7%(23/215)と高かったが統計学的には差はなかった。しかしやはり7か月以上の長期母乳哺育児は14.2%(20/141)と陽性率が高く,6か月までの短期母乳哺育児の4.1%(3/74)と有意差がみられた。 以上より,短期母乳哺育はHTLV-Iの母子感染のリスクとはならないことが示唆され,母親が希望すれば6か月までの母乳哺育は推奨しても構わないと考えられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 中村茂行ら: "南九州におけるHTLV-I母児感染追跡調査報告書および陽転者の経時的PCRの推移" 母児感染研究論文集(HTLV-I母児感染研究会事務局発行). 6. 24-29 (1994)
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[Publications] 沖 利貴ら: "南九州におけるHTLV-I母児感染の実態調査-主に授乳期間と母児感染率-" 母児感染研究論文集(HTLV-I母児感染研究会事務局発行). 6. 43-48 (1994)
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[Publications] 中村茂行ら: "HTLV-I感染が認められた追跡児17例の検討" 母児感染研究論文集(HTLV-I母児感染研究会事務局発行). 5. 23-26 (1993)
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[Publications] 中園伸一ら: "6歳でHTLV-I抗体が陽転したPCR陽性の1例" 母児感染研究論文集(HTLV-I母児感染研究会事務局発行). 5. 33-36 (1993)
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[Publications] 大塚博文ら: "HTLV-Iキャリア妊婦より出生した児でのHTLV-Iプロウイルスの検出と母児感染の実態" 母児感染研究論文集(HTLV-I母児感染研究会事務局発行). 5. 60-63 (1993)
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[Publications] Toshitaka Oki,et al: "A sero-epidemiological study on mother-to-child transmission of HTLV-I in southern Kyushu,Japan." Asia-Oceania J.Obste.Gynecol.18. 371-377 (1992)