Research Abstract |
歯や筋肉・骨格は栄養学的指標と密接な関連を有する。身体に関わるミネラル成分と歯,体組成指標との関連が,加齢とともにどのように変化していくのかを検討することが本研究の目的である。 研究の手続きとして7才から75才までの者を対象に1)歯科学的指標を咬耗度,左右第2大臼歯の咬合力(咬合圧,咬合接触面積),歯列の状態,歯列弓幅径,歯列基底弓幅径,同長径などについて測定し,2)身体の形態計測値(筋面積,徐脂肪体重,身長,体重など),基礎体力(筋の柔軟性・筋力,全身持久力,全身の瞬発力),走跳投のパフォーマンスについて測定した。また3)質問紙法により炭水化物,脂肪,蛋白質,ビタミン類,ミネラル類を含有すると思われる食品の嗜好についての調査を行った。また毛髪分析でもミネラル類の摂取を検討した。 得られた結果として次のような点があげられる。特に大学生について(1)瞬発的走力と歯列弓幅径(γ=.431),(2)握力と歯列幅弓径(γ=.328),(3)握力と歯列弓長径(γ=.351),(4)反復横とびと歯列基底弓幅径(γ=.431),(5)垂直とびと歯列弓幅径(γ=.399)などの「やや高い相関性」が観察された。すなわち,パワー系の基礎体力は歯列の形状と関係があり,一般的には上下顎骨の幅が大きい場合には力と速度の積である身体のパワーが特に大きくなる傾向が示唆されたことになる。 また一般的に青年期の食品嗜好の特徴として(1).肉類(内臓肉を除く)を好み,(2).豆類や海藻類を余り好まないという傾向が考えられた。また(3).食物の軟食化傾向も示唆された。今後の吟味が必要ではあるが,こうした食品嗜好は体組成への影響,歯牙への影響などが考慮されるところである。 今後,同様なデータの収集と児童期,壮年・高年期の者を対象に実施する計画である。
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