1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05041084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢原 徹一 東京大学, 教養学部, 助教授 (90158048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OYAMA K.A.N. メキシコ生態学センター, 研究員
KING R. スミソニアン研究所, 植物部門, 研究員
副島 顕子 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (00244674)
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Keywords | 有性生殖 / 無性生殖 / 倍数性 / 病原体 / 自殖性 |
Research Abstract |
本研究は熱帯・亜熱帯地域において、有性生殖型から無性生殖型への進化がどの程度頻繁に起きているか、またそれはどのような条件で起きているかを明らかにすることを目的としている。この目的のために、メキシコ産のステビア属とベネズエラ産のチャセンシダ属を現地で探索・採集し、染色体・遺伝的変異・系統関係および生育環境を明らかにする。 本年度はメキシコにおいて2度の現地調査を実施し、ステビア属について研究した。収集した資料について現在解析を進めているところであるが、予備的な研究結果から、有性生殖型は半砂漠地帯や湿地などの生育にストレスがかかる環境に生育し、無性生殖型は湿潤な森林地帯に分布するという傾向があることがわかった。この結果は、有性生殖型は病原体の早い進化に対抗する上で有利であり、従って病原体の多い湿潤地では有性生殖型が、逆に乾燥地では無性生殖型が多いはずであるというハミルトン仮説を支持せず、有性生殖型は2倍体であり、無性生殖型は倍数体であるために、草丈の高い競争的な種が少ないストレス環境において無性生殖型倍数体よりも有性生殖型2倍体が有利であるという矢原仮説を支持する。 系統解析の結果、ステビア属の木本性の種群と草本性の種群を単系統群とみなすことはできず、近縁属も含めて分類学的再検討が必要であることがわかった。無性生殖型は、草本性の種群においてくりかえし進化していることがわかった。従来の考えによれば、無性生殖型は他殖性の祖先から派生するものとみなされているが、自殖性の種から無性生殖型が進化していることが示唆される例が発見された。この事例が事実ならば、無性生殖型が有利になる条件は、他殖のコストが不要という点以外の要因(おそらく倍数性)であると考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] M.Ito et al.: "Molecular evidence for polyploid origin of the tribe Eupatorieae(Asteraceae)" Journal of Plant Research. 107. (1994)
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[Publications] T.Yahara et al.: "Molecular syotematics of Costa Rican Neomirandia(Eupatorieae;Asteraceae)" Journal of Plant Research. 107. (1994)
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[Publications] K.Watanabe et al.: "Chromosomal evolution in the tribe Eupatorieae(Asteraceae)" Journal of Plant Research. 107. (1994)
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[Publications] 矢原 徹一: "花の性の進化を探る" 農村文化社 (印刷中), (1994)