1995 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ多元文化社会における国民統合と教育に関する史的研究
Project/Area Number |
05301033
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Research Institution | Obirin University |
Principal Investigator |
中村 雅子 桜美林大学, 国際学部, 助教授 (10227879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 康人 放送大学, 教養学部, 教授 (90012559)
田中 喜美 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00115247)
坂本 辰郎 創価大学, 教育学部, 助教授 (60153912)
大桃 敏行 東北大学, 教育学部, 助教授 (10201386)
米澤 正雄 秋田大学, 教育学部, 助教授 (20175003)
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Keywords | 国民統合と教育 / アメリカ多元文化社会の教育 / 多文化主義 / マルチカルチュラリズム / 多文化教育 / ジェンダーと教育 / エスニシティーと教育 / 人種と教育 |
Research Abstract |
本共同研究の最終年度である平成7年度は、個別研究論文の執筆と全体研究会での報告・討議を経て、研究成果報告書(平成8年4月、240頁余)をまとめることができた。 思想研究においては、文化化、国民統合、公教育概念の検討を軸に、独立期と現代に焦点をあて、教育行政研究においては、エスニシティーと宗教を軸に、19世紀と現代の動向を分析した。「無宗教」だがキリスト教は前提とされるパブリックスクールの「公共性」を検討する際に、アイルランド系移民とプロテスタントに教義上の対立があったというよりは、カトリックということがエスニシティーの文化と政治の旗印として双方から認識されていたのではないかということ、また、マイノリティーの異議申し立てにおいて、様々な立場から「親権」がもちだされるという共通性が確認できたことは、今後のアイデンティ・ポリティスクと教育を検討する際の重要な手がかりとなるものである。高等教育研究においては、ジェンダーに軸をおいた研究と、国民統合における高等教育機関の役割を様々な大学像を通して検討した研究の双方ともに、学生と文化というテーマが析出されている。大学論だけでなく、軍事教練や生活そのものに分析対象が広がったことも重要である。教育実践研究においては、現代の多文化主義教育の実践とその評価の分析と、学校図書のセンサーシップの検討によって、アメリカの教育における「公共性」と「正統性」をめぐる議論を深めることができた。最後に、社会的構築であるジェンダーやエスニシティー、人種などを分析枠組とすることの意義と問題点が自覚的に究明される必要があること、多文化主義を国境内のまとまりで想定することの問題点とかかわって、国民文化をどうとらえるかという課題があらためて意識されたことを述べておきたい。
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