1993 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物圏起源の硫黄化合物を前駆物質とする大気エアロゾル及び雲の形成過程の研究
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05402067
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 浩 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (00115594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 政彦 群馬大学, 教育学部, 講師 (60212289)
近藤 豊 名古屋大学太陽地球環境研究所, 教授 (20110752)
池部 幸正 名古屋大学, 工学部, 教授 (50023073)
石坂 隆 名古屋大学大気水圏科学研究所, 助教授 (50022710)
大田 啓一 名古屋大学大気水圏科学研究所, 助教授 (80022250)
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Keywords | 有機硫黄化合物 / 硫化ジメチル / 雲凝結核 / 硫黄循環過程 / ジメチルスルフォキシド / メタンスルフォン酸 / 二酸化硫黄 / 小笠原父島 |
Research Abstract |
植物プランクトンが生成する還元性有機硫黄化合物である硫化ジメチル(DMS)が大気中に放出され、自然起源の硫黄の50%程度を占めている。特に海洋大気中の硫黄の大部分はDMS経由と考えられている。大気中のDMSは光化学的酸化を受け最終的には硫酸になり大気エアロゾルの主成分となる。大気エアロゾルの一部は雲凝結核(CCN)として活性化され雲粒形成の重要な要因となる。外洋大気の硫酸エアロゾル形成におけるDMSの寄与の度合いの変化を季節を通じて観測することは、大気化学的硫黄循環過程の解明に留まらず、雲形成に伴う気候変化の解明にも寄与するものと考えられている。この仮説を実証するために、陸地からの汚染大気の影響が及ばない小笠原父島で長期観測を実施することが本研究の目的である。 観測と同時にモデル計算を行い、DMSの酸化過程の特性を求めることに成功した。これによると、夏季におけるジメチルスルフォキシド(DMSO)経由のパスが有効であり、二酸化硫黄(SO_2)のパスとほぼ拮抗することがわかった。これにより、夏季のDMSOの観測の必要性が強く示唆される。 次年度からの本格的観測を目指して、本年度は小笠原父島の実地調査に基づく最適測定場所の選定と同時に、必要な測定装置の新規購入と既存装置の整備、名古屋における予備観測を行った。DMS連続観測のためガスクロによる自動捕集測定システムを作成し、名古屋の汚染大気のDMS測定を継続してきた。その結果、暖房用などに使用する重油の低温燃焼により局所的には海洋大気の100倍のppbオーダーに及ぶ多量のDMSが発生する可能性が認められた。現在、購入したサンプラーと高性能イオンクロマトによりメタンスルフォン酸の測定も行っている。このような新事実は今後硫黄循環過程をより詳細に解明するための重大な契機となろう。
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