1994 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代山岳伽藍の調査研究-如意寺跡を中心として-
Project/Area Number |
05451075
|
Research Institution | Paleological Association of Japan Inc. |
Principal Investigator |
江谷 寛 (財)古代学協会, 古代学研究所, 教授 (90223651)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 敏雄 近畿大学, 理工学部, 教授 (60088424)
関口 力 (財)古代学協会, 古代学研究所, 助教授 (30216527)
|
Keywords | 山岳伽藍 / 如意寺 / 平安時代 |
Research Abstract |
平成6年度は如意ケ嶽の三角点から測量基準点を移して大慈院及び西方院地区の地形測量を実施した。調査の結果,大慈院はほぼ標高400mにあって,北から南へ伸びる丘陵を利用し,本堂・講堂・深禅院と同じように三方を削平して平坦地を作り,建物群を配置していた事が確認できた。『園城寺境内古図』に描かれた四間四方の大慈院本堂と,その東側に描かれた桁行五間,梁間三間の建物及び付属の建物群はこの平坦面に建てられていたと考えられる。更にこの大慈院から前方(南方)は急な崖となってその下に三日月形の平坦地が確認できた。この崖と平坦地は『古図』の大慈院前の階段と西方院を描いたものであることがわかる。本年度はこの平坦地の発掘作業にかかれなかったが,平成5年度から継続している本堂地区の講堂前面での発掘において伽藍の造営工法が解明されるようになって来た。講堂の西・北・東の三方の高い部分を削平し,版築工法で土砂を埋めて平坦面を作り出して行った状況が明らかになった。この埋め立てた土砂の中に,10世紀前半の灰釉陶器をはじめ,縁釉陶器などが大量に出土している。このような工法であったことは,今までの外観だけの調査では想像することもできなかった。今年度の調査から,如意寺は10世紀前半に現在の講堂よりも高い位置に造営されていたと推定できた。 この創建の建物が廃絶した後,現在の講堂跡基壇とみている位置に講堂が再建された。それが『園城寺境内古図』に描かれている如意寺講堂の建物で鎌倉時代初期と考えられる。 この調査の成果から,今後山岳寺院の調査をどのように進めて行くかという問題点を提示したこととなった。
|
-
[Publications] 江谷 寛: "平安京出土の河内産搬入瓦" 古代学研究所『研究紀要』. 第4輯. 31-52 (1994)
-
[Publications] 江谷 寛: "古代中世の山岳寺院-如意寺を中心に-" 月刊『考古学ジャーナル』. 382. 2-4 (1994)
-
[Publications] 江谷 寛: "平安京の山岳寺院" 季刊『考古学』特集 平安京発掘. 第49号. 37-39 (1994)
-
[Publications] 江谷 寛: "山林修行の山寺-如意寺" 朝日選書『平安の都』. 515. 136-137 (1994)