1994 Fiscal Year Annual Research Report
中南米社会における先住民の「他者性」に関する比較研究
Project/Area Number |
05451087
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
木村 榮一 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80073344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉森 義紀 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80105379)
小林 致広 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10145823)
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Keywords | インディオ / 他者性 / インディヘニスモ / 脱国民 / 国民社会 / 語る偶像 / ラディーノ / クリオーリョ |
Research Abstract |
前年度に行なった資料の収集ならびに分析をふまえ、本年度は3名の研究分担者のテーマに従った個別研究を進めた。また、チアパスの先住民反乱に関する資料を継続的に収集するとともに、グアテマラならびに米国の先住民運動のリーダーからの聴取を行ない、現地の実情を知ることもできた。 木村は、メキシコのロサリオ・カステリャ-ノスの「チアパスもの」のうち『暗闇の儀式』は、カタリーナという女性呪術師の描写に代表されるように、インディオの個性の描出に成功していることを明らかにし、従来は「集団としてインデイオ」を描写する傾向が強かった中南米のインディヘニスモ文学の質を転換する画期的な作品となっていることを指摘した。小林は、先住民反乱における「外部勢力」の存在に対する対極的な評価に注目し、一般に流布している外部勢力による先住民操縦説とは逆に、先住民族の生き残り戦略として先住民が操る「語る偶像」のという戦術が開発れていることを指摘すると同時に、『暗闇の儀式』のなかにも非先住民である作者の思い込みが投影されていることを示唆した。吉森は、グアテマラの近代化の過程において語られてきた「民主主義」は、大多数の先住民族や民衆を除外したクリーオリョによる「国民国家」建設をもくろむ寡頭勢力の独占物であり続け、自国にアイデンティティを求めようとしない「脱国民化」した存在によって一方的に操作されてきた概念であることを明らかにした。 また、2年間にわたって収集した先住民運動関係の資料のうち、チアパスの先住民反乱に関する資料は、1995年中に資料集として刊行される予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 木村榮一: "ボルヘスの詩における運命" 現代詩手帖(思潮社). 11月号. 126-128 (1994)
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[Publications] 木村榮一: "ボルヘスと運命" スペイン語圈の現代文学(日本スペイン協会). (印刷中). (1995)
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[Publications] 小林致広: "チアパスにおける先住民運動(I)" 神戸外大論叢. 45-2. (1994)
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[Publications] 小林致広: "チアパスにおける先住民運動(II)" 神戸外大論叢. 45-. (1994)
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[Publications] 小林致広: "Modaliclades de la uida de los indigenas texcocanos en lade'cadci de 1530" ラテンアメリカ研究年報. 15(印刷中). (1995)
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[Publications] 吉森義紀: "ラテンアメリカの民主主義-ウルグアイの場合-" 神戸外大研究年報. 31. 1-69 (1993)
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[Publications] 太田昌国/小林致広: "もう、たくさんだ!-メキシコ・サパティスタ蜂起の記録" 現在企画室(印刷中), (1995)