1993 Fiscal Year Annual Research Report
大規模稲作複合経営の組織発展に関する規範的・実証的基礎研究:事前・事後的データの創出と組織経済性概念の開発
Project/Area Number |
05451123
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
樋口 貞三 筑波大学, 農林学系, 教授 (50003752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 哲志 筑波大学, 農林学系, 助手 (60241775)
長谷部 正 東北大学, 農学部, 講師 (10125635)
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Keywords | 個別複合経営組織レベル / 自己組織性的機能的連結組織レベル / 範囲の経済性 / 連結の経済性 / 「自=他愛」調整原理 / 組織非効率 / 事前・事後のデータ / 潜在的経済成果 |
Research Abstract |
1.樋口はレベル2における自己組織性的機能的連結組織を現実的観点から具体的に構想化する作業に着手した。まず、経営オペレーターの連結方式による村農場組織の再検討を行い、その検討から、自己組織性的機能的連結組織に要請される特徴として次の点を明らかにした。第一に、この組織は市場原理の中で経済効率性をシャープに追求しながらも、組織の持続性に使命感を帯び、その重大な責任性コストとして高所得機会を有するものの集まりである。第二に、この組織はレベル1(個別複合経営組織レベル)における範囲の経済性とレベル2(自己組織性的機能的連結組織レベル)における連結の経済性の両者が存在し得る組織であり、両経済性をエクスプロイト可能な性格を有する組織である。第三に、この組織の調整原理としては「自=他愛」調整原理、すなわち、「自=他」である「組織」忠誠とその豊かな代償を動機とした協力調整原理が有力である。第四に、この組織はその内部に構成員間の適正な競争機会を有しており、そこでの創造的な競争行動によって、組織非効率の発生が抑制されている。 2.長谷部は事前・事後のデータの区別を実際的に考察しながら、本間と共に、個別経営レベルでは達成が難しい潜在的経済成果の把握を主たる目的とした大規模稲作複合経営農家及び生産組織調査の設計を行った。 3.本間はレベル1における規模・範囲の経済性及び経済効率性等の概念を組織レベル2へ拡張する場合の問題点を理論・実証モデル構築の観点から検討した。その結果、レベル1における組織構成員の個別的特徴(個性)をレベル2における経済性概念(例えば連結の経済性等)にいかに反映させ、その影響を評価可能なものにするかという点が解決されるべき重要課題であることが明らかにされた。また、こうした二つのレベルから大規模稲作複合経営の技術的及び組織的経済性を考察するために必要な実際的知織やデータ,資料を得る目的で大規模稲作複合経営農家及び農作業受託組合調査を実施した。調査地は秋田県大潟村(大規模稲作複合経営農家3戸),同湯沢市清水町(農作業受託組合1組織),同秋田市豊岩(農作業受託組合1組織)である。その結果、事前データの創出にあたっては過去の経済成果に対する経営主ないし組織リーダーの評価ならびに将来の経済成果に対する彼らの期待形成の仕方について現実妥当性の高い想定を行うことが必要であり、そのためには彼らの情報処理特性における主たる共通点を見いだすことが重要な課題であることが明らかにされた。
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Research Products
(1 results)