Research Abstract |
本年度(平成5年度)の研究実施計画に基づき,得られた成果の概要を箇条書すれば以下のようである。 1.無拘束心拍出量計測法に関する実験的検討:生体アドミタンス信号(Y)を高精度に検出でき,且つ電気回路部の超小型化を図るため,従来の方法と全く異なる4電極交流(50kHz)電圧クランプ法を考案した。これに基づき回路設計を行い,Yの測定範囲;5〜50mS,直線性;0.1%/FS以下,クランプ電圧;40mVrms,最大通電電流;2mArmsで,回路基板の大きさが55x25mm(重さ7g)の試作開発に成功した。更に,長時間を装着しても違和感を伴わないテープ状の電極配置法の工夫,心拍出量測定に必要なアドミタンス脈波一次微分の最大値dY/dt]maxを,確立密度分布と一心拍間の積分値から高信頼に検出するアルゴリズムも開発した。 2.血圧及び血液物性の無侵襲同時計測に関する理論的・実験的検討:申請者らが考案・開発した容積振動法による血圧測定において,血液容積検出に光を用い,且つ2波長分光法を適用することにより動静脈血液酸素飽和度をも同時計測する方法の理論的考察を行い,これが実現できることを実験的に実証した。 3.各種計測法の検証実験:以上の計測法を動物実験的に検証し,(a)心拍出量算出に必要な胸部電気的モデルの実用的限界に起因して,絶対値計測は困難であるが,相対変化の追跡は高信頼に行えること,(b)酸素飽和度計測については,従来のパルスオキシメータ法に比べかなり高精度・高信頼に測定できることが示された。しかし,2波長分光計測を今回の無拘束システムに組み込むことは,回路構成上繁雑となることが予想され,血圧と心拍出量計測をベースとしたシステム構築がより実用性が高いという結論に至った。 4.無拘束循環機能計測システムの基本設計・開発:1.〜3.の成果に基づき,電気的アドミタンス法と光電容積振動法を併用した小型軽量(104x64x32mm,160g)の循環動態計測用の携帯システムの設計・試作開発を行った。本システムによれば,脈拍数,最高・平均血圧,脈波間隔,心室駆出時間,一回拍出量,心拍出量,末梢循環抵抗,心臓酸素消費量指標の8項目が同時モニタでき,次年度以降では本システムを日常生活等でのフィールド試験にも適用し,その性能評価と問題点等について検討していく予定である。
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