1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05556010
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
前 忠彦 東北大学, 農学部, 教授 (60134029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 聡 東北大学, 農学部, 助手 (60220555)
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Keywords | 酸性土壌 / 組織培養 / ストレス選抜 / アルミニウム |
Research Abstract |
本試験研究では、作物生産性の著しく低い酸性土壌における酸性土壌耐性植物を用いた食糧生産の向上を目標とし、植物組織培養技術の応用による酸性土壌耐性品種の育成強化と実用化へ向けての耐性評価を試みた。酸性土壌における作物生育の阻害の主要因はアルミニウムストレスである。これまでにアルミニウムイオンストレス選抜によって得られた選抜ニンジン培養細胞から再分化を経て、選抜種子が得られていたので、これを材料としてさらに次代の種子の獲得、およびこれら種子のアルミニウム耐性・酸性土壌耐性を、それぞれ水耕法および酸性土壌を用いた土耕法によって検定した。その結果、初代・2代目の選抜種子由来の植物固体は酸性土壌および水耕レベルでのアルミニウムストレスに耐性を有していることが示された。また、それらの個体のアルミニウムストレス下での根の元素組成を調べたところ、選抜種子由来の個体は、カリウム含量が高く保たれていること、アルミニウム含量が低い等のアルミニウムストレスに対して有利な性質を有していること、さらにこれらの性質は遺伝するもので、むしろ2代目の方が際だった耐性を示す場合も見られた。 これらの結果は、培養細胞のアルミニウムストレス選抜という方法により、実際の酸性土壌に耐性な植物を作り出すことが可能であることを示し、今後の育種の実用的な手段となりうることを明らかにした。また、このようにして得られた耐性形質は後代にも遺伝しうる安定なものであることから、一度選抜を行えば、その系統を維持することによって耐性系統の種子を恒常的に生産できる可能性も示された。今後、本研究で得られた情報をもとに、他の植物についても同様の手法で酸性土壌耐性の作物あるいは植物を開発・育成することにより、作物生産の向上および環境保全に資することができると考えている。
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