1993 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代日本における「自然」観念の超越的性格に関する倫理思想史的研究
Project/Area Number |
05610036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 覚明 東京大学, 文学部, 助教授 (70186170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠山 敦 東京大学, 文学部, 助手 (70212066)
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Keywords | 自然 / 自己 / 自然の超越的性格 / 近世儒教の自然観 / 国学の自然観 / 朱子学の自然観 / 俳諧における自然 / 近代の自然 |
Research Abstract |
本研究は、日本の思想や文学の中に表われている「自然」の超越的性格が、近世から近代にかけてどのように連続し、また変容していったかを明らかにすることを目的とするものであった。 以上の研究目的に沿い、本研究では近世儒教・近世国学における「自然」の位置、浄瑠璃脚本や読本等の近世文学における「自然」描写、俳諧における「自然」等を考察し、さらに近代思想・民俗学における「自然」の位置、近代小説・近代詩における「自然」描写等を考察することによって、近世・近代日本において「自然」が個人に対して持ていた超越的性格を整理することを通じて研究を進めてきた。 その結果得られた知見及び成果として、次の事柄が挙げられる。即ち、近世の「自然」観の諸相を考察する際、その形成に及ぼした朱子学的思惟(あるいはその「自然」観)の影響の甚大さという観点である。従来、朱子学は近世幕藩体制の指導理念という観点から、あるいはまた伊藤仁斎の古義学や荻生徂徠の古文辞学といったいわゆる日本的儒学、さらには本居宣長らの国学がそれへの批判・反発をその発生の母胎としていたという観点から論じられてきた。即ちそれは主として儒教固有の問題圏の内に限定され、またその性格も「反-日本的」「非-日本的」な思惟・「自然」観として扱われてきた傾向にある。だが本研究を通じ、それが単に儒教文脈の中でのみ限定的に扱われるべきものではなく、朱子学的思惟あるいはそのもたらした「自然」観が、例えば俳諧という近世特有の文芸そのものと深くつながり、あるいはその発生を決定づけるものではなかったかと思料されるに至った。
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Research Products
(2 results)