Research Abstract |
1.哺乳動物における血液型抗原物質の発現 ・・・ 昨年度に引き続き,ヒトをはじめとする数種の哺乳動物に関して,生殖器官と口腔内組織におけるABO式血液型関連糖鎖抗原の発現を調べた。ヒト,ニホンザル,ネコ,ウサギ,ラットの精巣では精母細胞や精子がカラクトース特異的レクチンにより染色されたが,抗ABH抗体とは反応しなかった。ネコ,ラットの精巣上体では上皮細胞と精子細胞が抗A抗体およびA型物質特異的レクチンと反応した。さらに,ネコの尿細管,ラットの前立腺でもA抗原の存在がみとめられた。ヒト,ニホンザル,イヌ,ネコ,ウサギ,ラットの味蕾細胞,舌腺分泌細胞では各個体のABO式血液型に相当する血液型関連糖鎖抗原が発現していた。ABO式血液型関連糖鎖抗原あるいは複合糖質が精子の発生,成熟や味覚受容に何らかのかたちで関与する可能性が示唆された。 2.各種動物のABO式血液型糖転移酵素遺伝子 ・・・ ヒト,ニホンザル,ブタ,ウサギ,ラット,マウス,チャイニーズ・ハムスター,マストミス,キンギョからDNAを抽出,ヒト血液型糖転移酵素遺伝子からデザインされたプライマーを用いて血液型決定部位領域をPCR増幅すると,動物種により異なる電気泳動像を示した。ヒトから得たPCR産物をプローブとするハイブリダイゼーションでは,ニホンザルはこれと反応したが,その他の動物では増幅領域により,動物種により結果は異なった。ニホンザルの血液型糖転移酵素遺伝子はヒトのそれに酷似する塩基配列であった。血液型決定部位の塩基はヒトのB型と同じものであり,ニホンザルにはB型物質が発現しているという我々の免疫組織化学的知見と一致していた。ヒト以外の動物にもヒト血液型糖転移酵素遺伝子近似の遺伝子が存在することが明らかとなった。なお,以上の結果は種差識別にも応用しうるものである。
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