1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝類洞壁細胞の機能的並びに超微形態的変化からみた硬変肝切除後の病態に関する研究
Project/Area Number |
05671059
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Research Institution | MIE University |
Principal Investigator |
野口 孝 三重大学, 医療技術短期大学部, 教授 (40144258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東口 高志 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (40198974)
横井 一 三重大学, 医学部, 講師 (60174843)
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Keywords | 硬変肝切除限界 / 残存肝機能 / 術後臓器障害 / エンドトキシン血症 / ケミカルメデイエーター / 肝類洞壁細胞 / 腸間膜リンパ節細菌培養 / 混合培養 |
Research Abstract |
最近、臓器障害の重要な因子としてendotoxin(ET)とbacterial translocation(BT)が注目されている。本研究では、この病態をよく反映するモデルの一つとして硬変肝モデルを用い、肝切除を行って、各種ケミカルメデイエーターを産生する肝類洞壁細胞と肝細胞とのinteractionをin vivo並びにin vitroの系から検討した。すなわち、雑種成犬を用いdimethylnitrosamin投与による硬変肝40%と70%切除や正常肝70%と84%切除について検索した。尚、大腸を洗腸及び抗生物質投与の処置群と未処置群に分け、BTは腸間膜リンパ節細菌培養陽性率(MLC)にて検討した。 1.生存率と大腸の術前処置効果:硬変肝40%や正常肝70%切除では大腸の術前処置によりMLCと血中ET値レベルの有意な低下を認め、従来承認されてきた硬変肝や正常肝の切除限界を超えたそれぞれ70%及び84%切除においても同様の病態を示し、有意な生存率の向上を認めた。 2.肝類洞壁細胞の機能的並びに形態的変化:大腸術前処置により、超拡大肝切除においても肝類洞内皮細胞やKupffer細胞は、血中ヒアルロン酸値やβ-NAH値からみた機能と電顕的な形態所見がともに良好に維持された。一方大腸術前未処置では機能と形態の異常が著明であった。 3.肝細胞とKupffer細胞のco-cultureからみたinteraction:硬変肝の40%及び70%切除後24時間目にエルトソエ-シヨンにより それぞれの細胞を単独培養すると、40%切除の方が各細胞の形態や機能が良好であったのに対し、肝細胞とKupffer細胞のco-cultureでは40%切除でも肝細胞の形態と機能の異常が軽度に認められた。しかし、70%切除のco-cultueでは有意に肝細胞の障害を認め、大腸の術前未処置群ではKupffer細胞、肝細胞ともに不可逆的な所見を示した。 以上より、硬変肝切除後の残存肝機能障害の増悪はbacterial translocationに依存しており、ET値の上昇に伴うKupffer細胞のprimingを招来し、肝細胞に対し、類洞壁細胞から発生するケミカルメデイエーターにより強い障害を惹起していることが示唆された。よって、大腸の術前処置は特に拡大肝切除の予後を向上した。
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[Publications] 東口高志: "肝不全" 救急医学. 17. 1567-1571 (1993)
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[Publications] 東口高志: "肝臓外科と臨床栄養法" JJPEN. 16. 943-948 (1994)
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[Publications] 野口孝: "消化器疾患-State of arts:RES機能の評価" 医歯葉出版, 3 (1993)