1996 Fiscal Year Annual Research Report

パルテノン神殿の造営目的に関する美術史的実地調査

Research Project

Project/Area Number	06041037
Research Institution	Tokyo Gakugei University
Principal Investigator	水田徹東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30055917)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	コレス M ギリシャ国立考古学研究所, 研究員ジェンキンズ I 大英博物館, 学芸員古瀬政弘東京学芸大学, 教育学部, 助手 (40251574) ロッホマン T バーゼル古代彫刻館, 学芸員中村明人東京学芸大学, 教育学部, 講師 (20243537) 河辺泰宏愛知淑徳短期大学, 家政学科, 助教授 (70195139) 佐藤達生大同工業大学, 建設工学科, 教授 (40131148) 金子亨東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (90233882) 日高健一郎筑波大学, 芸術学系, 助教授 (30144215) 篠塚千恵子トキワ松学園横浜美術短期大学, 造形美術科, 教授 (80279801) 桜井万里子東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (90011329) 福部信敏跡見学園女子大学, 美学・美術史学科, 教授 (90049320)
Keywords	パルテノン / 神殿 / アクロポリス / 彫刻 / メトープ / フリーズ / 様式 / 図像
Research Abstract	パルテノン神殿の建造目的を解明するため、バ-ゼル古代彫刻館、大英博物館、アクロポリス美術館、アテネ碑文博物館、及びパルテノン神殿を現地調査し、 1 パルテノン神殿の南メトープ浮彫の現存する18面の等高線図の印刷原稿を完成し、同メトープの最終的な配列復元案を設定した。 2 同神殿フリーズ浮彫については、(1)無表情との通説に対抗しうる人物の顔の表情表現を確認し、(2)「顔の表現と石版制作の間の規則性」や「騎馬隊の被りもの分類による群構成」の可能性を見出し、(3)造形および図像配列の分類に基づき、制作工房別による施工ないし工期の判別を導入できる手がかりを得、(4)特に南面及び北面の騎馬行列図では石版二枚ごとに工房が異なる事実を突き止め、(5)東面の少女群の衣裳の造形的相違や南北面人物の衣装表現について、先行研究を補筆・修正すべき事実を発見し、また(6)フリーズ浮彫に残されたドリル使用跡と人体ないし衣装の彫りの実測結果から、制作技法の違いを確認し、その違いの分類から工房・作家の担当石版を分別し得る調査結果を獲得し、さらに(7)新たな人物像の追加と群構成の規則性の解明により、石板の配列ないし復原について先行研究にない新知見を得、また(8)アテネ国立碑文博物館所蔵のパルテノン神殿建築碑文を解読することによって、神殿建造資金はアテネ女神の聖財からの調達が中心であり、従来定説となっていたデロス同盟資金からの出資は二義的である可能性が高いことが確認できた。以上の諸技法、配列を含む造形的表現、建築碑文の分析と統合により、パルテノン神殿がペリクレスの民主的政治思想を具現する目的で造営された事実を解明し、ギリシア美術史はもとより思想史や政治史にも新たな知見を提供しうる調査研究が達成できた。なお、東、西、北面のメトープ彫刻と破風彫刻に調査研究を新たに展開させることで、本研究の先見性を裏付ける新たな事実の発見が期待できる。