1996 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア史における「中央」と「地方」に関する研究
Project/Area Number |
06041072
|
Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉川 利治 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (60030144)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
U Tun Aung C ミャンマー歴史委員会, 委員兼秘書
DJOKO Suryo ガジャマダ大学, 文学部, 学部長
CHEAH Boon K マレーシア科学大学, 人文学部, 教授
VU Minh Gian ハノイ大学, 歴史学部, 学部長
NIDHI Aeusri チェンマイ大学, 人文学部, 教授
加藤 久美子 名古屋大学, 文学部, 講師 (80252203)
八尾 隆生 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50212270)
黒田 景子 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (20253916)
青山 亨 鹿児島大学, 南太平洋海域研究センター, 助教授 (90274810)
渡辺 佳成 岡山大学, 文学部, 助教授 (80210962)
桃木 至朗 大阪大学, 文学部, 助教授 (40182183)
|
Keywords | 中央と地方 / 碑文 / 口碑 / 成文法 / 地方文書 / 地方支配 / 民族 / 王権 |
Research Abstract |
わたしどもが意図した調査研究は、近代以前の東南アジアにおける「中央」と「地方」との関係を、様々な局面から考察することであった。とくに、東南アジアの個別言語で記録された資史料の所在を広く探り、可能な限り収集して、研究集積の手薄な東南アジアの「地方」の研究へ、比較の視点を加えて、研究を視野を拡げようと意図した。 吉川は、タイ中央部と南部の主要寺院に保存されている古文書のうち、19世紀頃まで用いられた成文法の約300編をコピーで入手することができた。桃木はベトナム中部で繁栄したチャム人の国家チャンバ王国に着目して、王国のあった遺跡を精力的に巡り、従来の研究文献を収集した。渡辺は、ビルマのコウンバウン王朝による地方支配や土侯国支配に関する資料を探す努力を重ねた。青山は、イスラーム文化、ヒンドゥー文化のインドネシアにおける伝播の位差を地方に見出そうと各地の旧王宮や遺跡を見学し、文化遺産の特徴把握に努めた。黒田は、マレー半島のタイとマレーシアとの国境に相互に入り込むモスリムと仏教徒の歴史的関係を、資料に加えてオーラルヒストリーの収集を行った。八尾は、ベトナムの北部地域の地方の実状を物語る諸史料(碑文、家譜、嘱書)はもう残存していないといわれていたが、今回の調査で発掘した。加藤は、北部タイと隣接するビルマのシャン州、中国雲南省の西双版納地区およびラオスに居住するタイ系諸族の間の歴史的重層関係を研究するため、タイのチエンマイにおいて資料調査を行い、「地方」の側の手書き北タイ文字の整理分析を行った。 研究メンバーの調査研究の一端を示し、今後の研究に向けての展望を『研究成果報告書』として最終年度末にまとめて紹介する。3年間の海外調査研究の成果は、今後の内外における論文発表によってさらに深まりと広がりを持って、学界に寄与することになろう。
|
Research Products
(27 results)
-
[Publications] 吉川利治: "創られる歴史像-近現代に見るタイの国家意識-" 重点領域研究「総合的地域研究」『東南アジア史に見る国家意識』成果報告書シリーズ. 12. 1-27 (1996)
-
[Publications] 吉川利治: "1850年代初頭のタイ南部支配に関するテーマ四世文書" 東南アジア史の中の「中央」と「地方」文部省科研(国際学術研究). (3月予定). (1997)
-
[Publications] Momoki Shiro: "Nhat Ban-Viet Nam trong he thong buon ban chau A vao the ky 17-18" Uy ban Nhan dan Tinh Hai Hung(ed.) pho Hien 所収 ハイフン省人民委員会『フォーヒエン』所収 77〜18世紀アジア支易圏のなかの日越関係. 45-54 (1994)
-
[Publications] 桃木至朗: "ヴィエットナム前近代史の時代区分" 古代文化. 46-11. 48-54 (1994)
-
[Publications] 桃木至朗: "ベトナムの「中国化」" 池端雪浦編『変わる東南アジア史像』所収(山川出版). 109-129 (1994)
-
[Publications] 桃木至朗: "あたらしいチャンパ史" チャンパ王国の遺跡と文化展実行委員会編『チャンパ王国の遺跡と文化』所収(トヨタ財団). 65-72 (1994)
-
[Publications] 桃木至朗: "「南国」の世界像-「北」との関係を中心にして" 吉川利治編『東南アジア史に見る国家意識』文部省科研重点領域研究「総合的地域研究』成果報告書シリーズ. 12. 28-39 (1996)
-
[Publications] 桃木至朗: "南から見た明清史-ベトナム経済史の場合" 森正夫他編『明清時代史の基本問題』所収(汲古書院). (近刊).
-
[Publications] 渡辺佳成: "コンバウン朝前期における支配領域の認識" 吉川利治編『東南アジア史に見る国家意識』重点領域研究「総合的地域研究」成果報告書シリーズ. 12. 40-66 (1996)
-
[Publications] 渡辺佳成: "英雄としての王たち" 旧村克己・根本敬編『ビルマ』所収(河出書房新社). 92-99 (1997)
-
[Publications] 渡辺佳成: "英領インド編入時代のビルマ" 近藤治編『アジアの歴史と文化』第10巻南アジア史(同朋舎). (3月刊行予定). 133-142 (1997)
-
[Publications] 青山亨: "叙事詩,年代記,予言:古典ジャワ文学に見られる伝統的歴史観" 東南アジア研究. 32-1. 34-65 (1994)
-
[Publications] 青山亨: "アルジュナウィジャヤからスタソーマへ:歴史的文脈の中の二つの古ジャワ語文学作品" 東洋學報. 77巻1-2号. 200-232 (1995)
-
[Publications] 青山亨: "ジャワ世界の形成:その歴史的変遷" 総合的地域研究. 10号. 29-33 (1995)
-
[Publications] 青山亨: "Annoted Invntory of a Collection of Palaun Legends in the Belan National Museum" 南太平洋海域調査研究報告(ベラウ国立博物館所蔵パラオロ承記録解題). 30号. 113-125 (1996)
-
[Publications] 黒田景子: "サムサムとシャム人:ケダ-におけるThai-speakers小史" 南方文化. 22輯. 44-61 (1995)
-
[Publications] 黒田景子: "『マフスリ伝説』の真実-マレーシア・タイのOral Traditionの例-" 鹿児島大学教養部史学科報告. 43号. 21-28 (1996)
-
[Publications] 八尾隆生: "黎朝聖宗期の新開拓地を巡る中央政権と地方行政-安興碑文の分析" 東南アジア研究. 33-2. 1-26 (1995)
-
[Publications] Yao Takao(八尾隆生): "Khao Sat Nien hieu Vua Le Nhan Tong" 大阪外国語大学論集. 13. 195-206 (1995)
-
[Publications] 八尾隆生: "林邑" 桃木至朗編『平成2年度文部省科学研究費(海外学術研究)報告書(大阪大学). 1-28 (1995)
-
[Publications] 八尾隆生: "黎朝聖宗期の嘉興丁氏-嘱書の分析から" 東洋學報. 78-2. 01-027 (1996)
-
[Publications] 八尾隆生: "嘉興府土〓何氏文書校合" 吉川利治編『平成8年度文部省科学研費(国際学術研究)報告書』大阪外国語大学. 18頁 (1997)
-
[Publications] Kumiko Kato(加藤久美子): "Changes is Sipsonganna in the Eighteen Century:focusing on 1920's and 1730's" Conference Paper of the 13th Coference of International Association of Historians of Asia(IAHA),Sophia University,Tokyo,5-9 Sept.(1994)
-
[Publications] Kumiko KATO(加藤久美子): "'Taxation Systems in Sipsong pauna in the “Pre-liberation" Period:with Special Reference to the Capetal Muang,Muang Chiang Rung" Coference Paper of the 14th Conference of the International Association of Historian of Asia(IAHA),Chalalongkorn University 20-24,May. (1996)
-
[Publications] Kumiko KATO(加藤久美子): "Changes in Sipsongpanna in the Eighteenth Century : Fowsing on 1720's and 1730's" 名古屋大学文学部研究論集(史学). 43. 1-18 (1997)
-
[Publications] 吉川利治: "泰緬鉄道機密文書が明かすアジア太平洋戦争" 同文館, 352 (1994)
-
[Publications] Yoshikawa Toshiharu: "Thangrotfai sai thai-phaima nai samai Songkhram maha echia burapha(タイ文)(大東亜戦争時代の泰緬鉄道)" Amarin Book Center,Bangkok Thailand, 472 (1995)