1994 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける国民国家.民族集団及び宗教の係わりに関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
06041109
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
綾部 恒雄 愛知学院大学, 文学部, 教授 (30037030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ソンブーン スクサムラン チェラロンコーン大学, 政治学部, 教授
レスリー バウゾン フィリピン大学, 歴史学部, 教授
シャムスル A.B. マレーシア国民大学, 人類学・社会学部, 教授
レオ スリヤディナタ シンガポール大学, 政経学部, 教授
佐々木 宏幹 駒沢大学, 文学部, 教授 (30052426)
中島 成久 法政大学, 第一教養部, 教授 (80117184)
荒木 美智雄 筑波大学, 哲学思想学系, 教授 (60103032)
寺田 勇文 上智大学, 外国語学部, 教授 (20150550)
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Keywords | 国民国家 / エスニシティ / 慣習法 / シンクレティズム / 千年王国運動 / フォーク・カトリシズム / 国民化 / 周縁性 |
Research Abstract |
平成6年度の研究実績を研究対象国毎に箇条書きにまとめる。研究課題は「東南アジアにおける国民国家、民族集団及び宗教の係わりに関する文化人類学的研究」である。 1.国民国家タイに関しては、200年前に移住したベトナム系カトリック教徒とベトナム系仏教徒の国民過程におけるエスニシティの変化の比較及び華人系タイの動乱Tahg-ki(シャーマン)の研究によって、同系統の民族集団においても宗教の相違によって、そのエスニシティに違いがみられることが確認された。 2.インドネシアはイスラム教が優越した国であるが、華人社会では、儒教の復興など、なお民族的宗教の力が大きいこと、スマトラはミナンカバウ社会の母系性原理のように、慣習法がなお強力に機能していることが確認された。ミナンカバウでは、慣習法、イスラム法、国家法の三重構造が認められる。 3.フィリピンは一般に宗教的にはカトリックの優越と少数派ムスリムの反抗とソラニ分法で捉えられている。しかしキリスト教徒側の内部も複雑であり、今回の調査ではボナハウ山麓の千年王国運動グループやディナガ島を中心とする千年王国運動グループなど、カトリックの一元的支配に対する一種の抵抗運動が数多く観察された。従来のフォーク・カトリシズムの研究とソラシンクレティズムの視点のみでなく、キリスト教マイノリティ側の千年王国主義という周縁性の視点を導入することが、国民国家論との関係で重要である。 4.マレーシアでは従来半島部におけるマレー人と華人との関係についての研究が多かったが、本調査ではサバ、サラワク地区における両者の関係及びインド系マレーシア人の民族的位相についての研究が進められており、現在その中間分析の結果を待機している。
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[Publications] 綾部恒雄: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「タイ国における黒タイ族の"民族的"位相」" (予定), (1995)
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[Publications] 寺田勇文: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「スルー海域のバジャウ族-海洋民の「国家化」過程をめぐって-」" (予定), (1995)
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[Publications] ソンブーン・スクサムラン: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「民族の存続にむけた戦略-ハート・スィオのプアンにおけるケース・スタディー" (予定), (1995)
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[Publications] シャムスル A.B.: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「東南アジアにおけるエスニシティと国民国家の形成-マレーシアの経験より-」" (予定), (1995)
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[Publications] 中島成久: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「現代ミナンカバウにおける家族のディスコース」" (予定), (1995)
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[Publications] 森正美: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ,「フィリピン・マラナオ社会における慣習・国家・イスラーム-法制度と紛争処理を通して-」" (予定), (1995)
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[Publications] 綾部恒雄: "東南アジアにおける国民国家とエスニシティ" 明石書店(予定), 285 (1995)
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[Publications] 寺田勇文・宮本勝: "アジア読本.フィリピン" 河出書房新社, 333 (1994)