1996 Fiscal Year Annual Research Report
変容するアジアと日本 -経済・政治・国際関係・文化のダイナミズム-
Project/Area Number |
06044204
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Research Institution | RIKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
五十嵐 暁郎 立教大学, 法学部, 教授 (90097220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAFAEL Vicen カアリフォルニア大学, サンディエゴ校・コミュニケーション学部, 助教授
WUN'GAEO Sur チュラロンコーン大学, 政治学部, 教授
FIELD Norma シカゴ大学, 人文科学部, 教授
MOLASKY Mich コネチカットカレッジ, 日本語日文学部, 助教授
CHUNGーMOO Ch カリフォルニア大学アーバイン校東アジア文化学部, 教授
倉田 秀也 常葉学園富士短期大学, 国際教養学部, 助教授 (90225243)
ADAMS Robert 上智大学, 比較文化学部, 助教授
篠原 初枝 恵泉助学園大学, 人文学部, 助教授 (30257274)
中逵 啓示 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (30183081)
村嶋 英治 成蹊大学, 文学部, 教授 (70239515)
比屋根 照夫 琉球大学, 教養部, 教授 (10045172)
見田 宗介 東京大学, 教養学部, 教授 (10012345)
冫余 照彦 名古屋大学, 経済学部, 教授 (60089977)
野村 浩一 専修大学, 法学部, 教授 (80062529)
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Keywords | 経済発展 / 文化受容 / 「ジャパナイゼーション」 / 「新中産階級」 / 地域主義 / 東アジア |
Research Abstract |
五十嵐暁郎 本共同研究における五十嵐の役割は、共同研究全体を運営するとともに、総論、結論的な部分を担当することにあった。このために、何回かの研究会において提出された論点を整理するとともに、独自にいくつかの論点について現地調査をおこない、その結果を分析、研究した。たとえば、「ジャパナイゼーション」とよばれる現象の背景としての東アジアの国際経済や、日本の大衆文化を受容する東南アジアや韓国、台湾など各地域の経済、社会の発展状況、「新中産階級」の台頭と彼らの生活スタイル、さかのぼっては各地域の伝統文化や近現代における外来の文化の受容のあり方などである。また、一方においては、日本の大衆文化の受容が、それぞれの地域においてどのような影響をもたらしたのかという、この主題において最も検証が困難な問題を調査し、また考察した。 その結論としては、国際経済とくに1985年のプラザ合意以後の日本経済の東南アジアなどへの進出、そして反転して90年代に入ってからの東アジアの国際経済の流れの変化に注目すべきであると考えるにいたった。また、日本と他の東アジアの文化の共通性、共鳴性については十分な結論に到達するには至らなかったが、いくつかの論点を示すことはできたと思う。日本文化受容の影響については、内容によって、地域によって、また状況、世代によって多様であるとの結論に一応達した。本来この研究は多分野、多地域にまたがるうえに、ある意味では多義的な性格を持った主題であるために、とくに五十嵐が担当した総論、結論部分は容易ではなかったが、今後の研究への問題提起の意味をこめて発表したい。 野村浩一 現代中国の激しい変容は80年代に始まるが、改革・開放の時代がすでに20年近くを経過した現在においても、その帰趨はなお決してあきらかとはいえないように思われる。 (1)経済面での驚異的な成長は周知のところであり、かつマクロ・コントロールもようやくある程度機能するようになってきたが成長にともなう矛盾もまた著しく、とりわけ広大な国土と12億人の人口を背景に生み出される地方的経済格差は想像を絶する広がりをもつ。(2)また政治面では権力のスムーズな継承を大目標にひたすら安定がはかられているが、その分だけ対外的には硬直的な志向、対内的には保守的な志向が生み出されているといえるかも知れない。そうした現状を前提に、とりわけ文化・思想のダイナ
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ミクスへのアプローチを試みるべく1994年度には先ず現地調査を行なったが、そこで暫定的結論は一言で基軸のゆれ、ないし喪失とそれに由来する伝統文化への回帰であった。そうした視点から担当者としてはむしろ現在の変容を長期的なスパンの中に置き直してみることの重要性を感じた。『中国論の現在』はその一つの試みである。この場合、日本との関係(ジャパナイゼーション?)はやはり大きい意味をもっている。そして、そこに潜在する意識は一方における日本の歴史的近代化・現代化に対する一定の評価と他方におけるある種の軽視の感覚であるように思われる。現在、近隣の一国として日本の与えるインパクトは文化面でもたしかに大きい。しかし、それが二様の意味をもっていることは十分に分析されねばならない。なお、いま一つ将来への展望として念頭におかねばならないのは、中国が歴史的にもつ世界性と包攝性である。この観点からみる時、21世紀にかけて日本の占める一がどのようなものとなるかは、今後の重要な考察課題となるだろう。(1)改革・開放(2)伝統回帰(3)近代化(4)世界性 倉田秀也 韓国政治を専門とするものであるが、過去の業績は、(1)内政史、憲法史に属するもの、(2)国際政治、安全保障に属するものの二つに大別できる。(1)については主として韓国の憲法改正史を政治の観点から捉えたもので、主として共著書に掲載されている。最近の論運は議院内閣制への憲法改正論議を政権交代論との関係で分析したものが大半を占める。これらは最終的には、韓国政治が政権交代のメカニズムが確立していく過程を立証していく研究の一部を構成するものである。資料は、憲法改正史、政治史に関する既存の研究書のほか、大統領秘書室発行の資料、政党機関誌、政党関係者の回顧録が多い。 (2)については、南北朝鮮関係を中心とした安全保障、朝鮮半島をめぐる多国間関係を韓国の統一・外交製作から分析したものが多くを占め、それらは主に国内外の学会誌等の雑誌に掲載されている。この問題は韓国が南北対話に着手した70年代初頭の南北対話から冷戦後の現状分析に至るものまで様々である。いずれも朝鮮問題を現象的に把握するのではなく、できるだけ構造的な理解を促すことを念頭に執筆した。特に、核拡散問題、朝鮮戦争の戦後処理問題など、隣接領域との接点に問題意識が向けられている。資料は韓国、北朝鮮で発行されている政府、党機関紙に加え、米国国務省関連資料、ロシア語、中国語による新聞、軍関係機関紙などである。(1)韓国政治(2)韓国憲法(3)政党政治(4)南北朝鮮関係(5)統一問題(6)核問題(7)平和体制(8)多国間協議 Robert W.Adams While attending the entire confernce on "Japan and Asia in transition". and serving as a commentator for a panel,I was most impressed by the fact of the growing diversity of regional and global orders in which the countries in the Pacific-Asian region participate. Within this diversified field,the effects of Japanese civilization and culture can be found,sometimes in heavily concentrated doses. The main influences are,as should be expected,to be found close to the economic sphere whether in technological hardware or in management systems that accompany Japanese firms as they move overseas But there are also influences from popular culture,such as manga and the like In the context of the overwhelming presence of Chinese-speaking populations and the concomitant cultural influenceswhether Confucianism or Chinese pop culture such as music,movies,or everyday artifacts the Japanese presence cannot be dominating,but it does contribute to the creation of the dynamism found throughout Asia.(1)Japan and Asia(2)regional and global orders(3)Confucianism(4)Chinese pop(5)civilization(6)culture 見田宗介 近代社会の見本的な傾向としての情報化、および消費化という理論とこの両者の間の関係、およびその外部的作用としての環境、校がい・資源・エネルギー問題、およびいわゆる「南北問題」-「開発」「人口」「貧困」等の問題との関連で、総合的に抱える理論フレームを構築し、その解決の方向を提示する。(1)情報化(2)消費化(3)資源・エネルギー問題(4)環境問題(5)南北問題 Less
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 冫余 照彦: "「台湾企業からみた日台関係」" Business Journal 一ツ橋大学産業研究所. (近刊). (1997)
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[Publications] 冫余 照彦: "「NIES 韓国・台湾の経済と日本の援助」" 日本的経営・先端システムと東アジア 板垣博編 ミネルヴァ書房. 25-64 (1997)
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[Publications] 冫余 照彦: "「東アジア経済の中の日韓関係」" 東アジア経済発展と日韓技術移転. 1-16 (1997.3)
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[Publications] 比屋根照夫: "「沖縄-自立・自治への苦闘-」" 世界. 第625号. 78-91 (1996)
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[Publications] 野村浩一: "蒋介石と毛沢東" 岩波書店, 300 (1997(予定))
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[Publications] 比屋根照夫: "近代沖縄の精神史" 社会評論社, 255 (1996.9)
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[Publications] 見田宗介: "現代社会の理論-情報化・消費化時代の現在と未来-" 岩波書店, 188 (1996)