1995 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期・関門港と華商海上ネットワークに関する実証的研究-『門司新報』と華商文書「泰益号」を中心素材として-
Project/Area Number |
06451113
|
Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
和田 正広 九州国際大学, 法学部, 教授 (00167206)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 睦男 九州国際大学, 経済学部, 教授 (30182504)
|
Keywords | 上海発送の漢方薬材 / 低関税率の関門港 / 植民地台湾 / 長崎泰益号 / 関門海運業 / 華商の交易貨物 / 門司税関 / 日本経済の景気動向の一縮図 |
Research Abstract |
平成7年度の研究業績は以下の通りである。物的流通の拠点港たる関門港、就中税関港として長崎泰益号の貨物(海産物・漢方薬材他)託送に関係した門司港の海運会社には多数の大型・中型船舶をもつ中央大手の日本郵船・大阪商船等や、地元の近海郵船等の海運会社の支店・代理店に任じた西村回漕店・村本組(村本回漕部)等の9社があった。小型の艀・荷船しかもたず、華商との取り引きにおいて艀賃・積み込み料・手数料で収益をあげた回漕店の景気動向は、第一次世界大戦の戦中・戦後における好・不況を反映した関門ないし日本経済の景気動向の一縮図であった。又、日本の植民地台湾の華商が上海から輸入した漢方薬材は、長崎泰益号が両者と仲介の商取引を行った後、貨物の輸送は上海から低関税率の関門港へ運ばれ、門司から終点港の台北・基隆・安平(台南)へ海上輸送されたこと等が判明した。 次に、関門をネットワークとする華商の交易貨物は、主に上海から関門(特に門司税関)を通関して台湾へ海上輸送されたことから、本年度は「泰益号上海関係商業書簡資料集」の複製本刊行に向けてほぼ整理を終了した。これと併行して一昨年に研究協力者を含む共同研究者の研究業績を論文集の形で厦門大学から『近代旅日華僑与東亜沿海地区交易圏-長崎華商「泰益号」文書研究-』として刊行した中国語版(サントリ-文化財団助成)の日本語註釈本も九大出版会から出版準備中である。また『門司新報』の中国関連記事(ファイル化完了済)のカードによる索引化は終了し、同じく関門海運業関連資料のファイル化は目下進展中である。 なお、平成7年度は研究分担者・研究協力者を結集した計三回の研究会を通じて、関門をネットの結節点とした、上海発送の漢方薬材、あるいは大連とのマクロな輸出入品目の他、近代日本女性のアジア諸地域への出稼ぎ問題等についても新たな分析視角が提起された。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] 和田正広・翁其銀: "長崎泰益号に連関した門司海運業" (九州国際大学)社会文化研究所紀要. 36. 74-120 (1995)
-
[Publications] 和田正広・翁其銀: "門司西村回漕店と長崎泰益号について(一)" (九州国際大学)社会文化研究所紀要. 37. 124-186 (1995)
-
[Publications] 和田正広・翁其銀: "門司西村回漕店と長崎泰益号について(二)" (九州国際大学)社会文化研究所紀要. 38. (1996)
-
[Publications] 夏春玉・和田正広: "九〇年代中国の流通体制改革について" (九州国際大学)社会文化研究所紀要. 37. 95-122 (1995)
-
[Publications] 山下睦男・夏春玉: "中国における企業の経営規模に関する-考察-日本との比較を中心に-" (九州国際大学)経営経済論集. 2-1. 84-101 (1995)
-
[Publications] 山下睦男・夏春玉: "中国における木材流通主体に関する-考察" (九州国際大学)社会文化研究所紀要. 38. (1996)
-
[Publications] 市川信愛・和田正広他: "華僑ネットワークの論理と実証" 九州大学出版会, 130 (1996)