1996 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期・関門港と華商海上ネットワークに関する実証的研究-「門司新報」と華商文書「泰益号」を中心素材とし
Project/Area Number |
06451113
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Research Institution | KYUSHU INTERNATIONAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
和田 正広 九州国際大学, 法学部, 教授 (00167206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 睦男 九州国際大学, 経済学部, 教授 (30182504)
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Keywords | 長崎華商「泰益号」 / アジア海域 / 上海商社 / 門司港運組織=回漕店 / 台湾の台北・基隆・安平 / 三角形販路 / 漢方薬材 / 脱税のメリット |
Research Abstract |
長崎華商「泰益号」は、自社の取引貨物(海産物・麦粉・大豆等)や、上海の商社から通関港の門司へ輸出した後、台湾の商社へ移出される漢方薬材を、門司港運組織に託運してアジア海域へ輸出(又は移出)する独自の交易で、或いは仲介業務による手数料で収益をあげていた。この内、泰益号から漢方薬材の輸送を委託された門司港運組織=回漕店(海運会社の日本郵船・大阪商船や地元の近海郵船の支店又は代理店)が、艀賃・積込料・手数料で収益をあげていた景気動向は、当時の日本経済の一縮図を反映したものであった。千四百通の泰益号宛て門司書簡の分析によれば、従来盲点であった近代門司港の港運組織の実態の一班、即ち松井回漕店・西村回漕店・村本組(現在の北九州運輸の前身)以下の十三件の回漕店に於ける、店の所在地、営業種目とその料金、泰益号との取引回数・取引商品、取引商品の価格・関税率、業務担当社員名等が判明した。 次に、上海から輸出さえた漢方薬材が門司港を通過して、台湾の台北・基隆・安平(台南)へと三角形の販路で移出されたのは、アジア海域への石炭の輸出に代表される門司港の安い船賃や関税とか脱税のメリットを活用したものであった。三角形販路に参入した上海の薬材卸商店には、裕浮系の薬材商社・鼎成系薬行・乾泰薬行・協成元記薬行・同康薬行の五大商店を含む二十余件があり、輸出をめぐる激しい競争があった。台湾向けの強壮強精剤は安価な薬剤に偽装挿入されて虚偽申告が行われ、税関職員の目を誤魔化していた。輸出薬材の薬効よりみた場合、薬養生よりも体養生(補血剤として最大の取引量があった大棗^<あかいなつめ>)とか性養生(補陰剤として第二の取引量を誇る木耳^<しろいきくらげ>)としての薬材が多かった。資料集としては、『長崎華商泰益号宛て上海商社業務書簡資料集〔鼎記〕』七冊を刊行し、『門司新報』中国関連記事のデータベースを完成した。
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[Publications] 和田 正広: "旅日華商長崎泰益号の営口貿易" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第35号. 79-139 (1994)
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[Publications] 朱 徳蘭: "明治期における長崎華商泰昌号とその貿易ネットワーク" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第35号. 19-69 (1994)
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[Publications] 和田 正広: "長崎泰益号に連関した門司海運業" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第36号. 74-120 (1995)
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[Publications] 翁 其銀: "上海・長崎・台湾間における漢方薬材の三角形販路について(一)" 九州国際大学論集・教養研究. 第12巻第1号. 33-65 (1995)
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[Publications] 和田 正広: "門司西村回漕店と長崎泰益号について(一)" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第37号. 124-186 (1995)
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[Publications] 朱 徳蘭: "近代長崎華商商業文書史料とその研究課題について" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第37号. 81-94 (1995)
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[Publications] 山下 睦男: "中国における企業の経営規模に関する一考察-日本との比較を中心に-" 九州国際大学・経営経済学論集. 第2巻第1号. 84-101 (1995)
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[Publications] 翁 其銀: "上海・長崎・台湾間における漢方薬材の三角形販路について(二)" 九州国際大学論集・教養研究. 第2巻第2号. 53-99 (1995)
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[Publications] 翁 其銀: "上海・長崎・台湾間における漢方薬材の三角形販路について(三)" 九州国際大学論集・教養研究. 第2巻第3号. 35-78 (1996)
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[Publications] 翁 其銀: "上海乾泰薬行の長崎泰益号と台湾商社との交易問題" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第38号. 1-51 (1996)
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[Publications] 翁 其銀: "上海・長崎・台湾間における漢方薬材の三角形販路について(四)" 九州国際大学論集・教養研究. 第3巻第1号. 1-38 (1996)
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[Publications] 和田 正広: "門司西村回漕店と長崎泰益号について(二)" 九州国際大学論集・教養研究. 第3巻第1号. 39-80 (1996)
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[Publications] 山下 睦雄: "中国における木材流通主体に関する一考察" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第38号. 126-152 (1996)
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[Publications] 和田 正広: "華商からみた近代門司港の一側面" 北九州港. 第77号. 30-35 (1996)
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[Publications] 和田 正広: "門司西村回漕店と長崎泰益号について(三)" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第39号. 1-29 (1996)
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[Publications] 翁 其銀: "漢方薬材三角形販路における上海協成元記薬行" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第39号. 31-96 (1996)
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[Publications] 趙 徳玉: "近代日本婦女の海外出稼ぎと女性の人権問題" 九州国際大学社会文化研究所・紀要. 第39号. 138-182 (1996)
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[Publications] 翁 其銀: "上海・長崎・台湾間における漢方薬材の三角形販路について(五)" 九州国際大学論集・教養研究. 第3巻第3号. 63-100 (1997)
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[Publications] 市川 信愛: "華僑ネットワークの論理と実証" 九州大学出版会, 112 (1996)
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[Publications] 翁 其銀: "長崎華商泰益号宛て上海商社業務書簡資料集" 和田正広<基盤研究(B)(2)代表>, 1500 (1997)