Research Abstract |
第2年度の研究目的は,体育授業においてインクルージョン(障害児が健常者に混じって授業を受ける)を試みている特殊学級,養護学校の実践を縦断的に追跡し,その身体活動量の変化,体力の変化,仲間関係の変化等を分析,整理することである。 インクルージョンの指導計画にあたって工夫した内容は,運動種目の選択,ルールの改変,および教師の指導技術である。児童・生徒の能力差への対策,障害児に対する偏見の是正,障害児と健常児間でおこる摩擦に対する指導方針を設定して実践を行った。 児童・生徒の身体活動量の調査(ペドメーターと心拍数)においてはボールゲームの種目において有意の増加がみられた。変化がみられなかったのは陸上競技,機械運動,マット運動などの個人種目であった。健常児が自分ひとりでやれる種目よりは共同で活動し健常児の支援が得られやすい種目の方が変化が大きくあらわれた。 体力面で有意の伸びがみられたのは,持久力,敏捷性,平衡性であった。瞬発力,柔軟性においてはあまり変化はみられなかった。運動不足故の低体力は持久力の面で改善が大きいことが明かとなった。 仲間関係の向上については二つのタイプがみられた。ダウン症候群,単純性の精神遅滞においては1月以内で仲間からの理解と支援がえられるようになった。一方,多動傾向のある子ども,自閉傾向の子どもは健常児側のアプローチがあるにもかかわらず,なかなか仲間関係が結ばれなかった。健常児の中で,障害児が混じることに対する不満を訴える者は当初60%をこえていたが,3学期においては10%未満になった。いつも障害児にばかり合わせていたプログラムを変えて,双方が思いきり活動できるよう時間配分,場所の設定を工夫したプログラムに変えたことが,この問題の解決に有効でった。 インクルージョンにあたって,健常児側の障害児理解においては,実際に同じ活動を行ったということ,そしてその時,障害児が友好的,積極的反応を示したことが仲間関係を深め,偏見を是正するきっかけになったという報告が得られた。また,障害についての教師の科学的説明も有効であることが明かとなり,指導者の配慮によりインクルージョンは発展させうるという結論が得られた。
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