1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610035
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
上妻 精 共立女子大学, 総合文化研究所, 教授 (10054298)
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Keywords | 精神の現象学 / 二重否定の論理 / 反省哲学 / 思弁 / 個体性 / 客観性の形而上学 / 主観性の形而上学 / スピノザ哲学 |
Research Abstract |
当初の計画では、イエナ時代に先立つ若きヘーゲルの思索の成立過程を中心に研究を進めるはずであったが、諸々の事情により、むしろイエナ時代のヘーゲルが研究の主題となった。イエナ時代のヘーゲルの思索は、一般に『精神の現象学』成立に至る思索の体系化の過程として見られ得るが、研究を通して得られた新たな知見にしては、第1に体系化に際して、ヘーゲルはカントのコペルニクス的転回を踏まえて、主観性の立場を最早不可逆的なものとして引き受けながら、カントなど反省哲学が二元論の立場に留まるかぎりで、デカルトの二元論の克服を目指したスピノザ、ライプニッツを追って、これら客観性の形而上学の主観性の立場への転換を通して、反省哲学の克服を目指していることを明らかにし得たこと、第2にイエナ初期においては直観と反省との統一として思弁を捉えていたヘーゲルが、『精神の現象学』において概念の自己運動として思弁を捉えるに至る過程においては二重否定の論理の発見が大きな役割を果たしていること、そしてこの二重否定の論理を、ヘーゲルは一切の規定は否定であるとするスピノザ哲学においては、個体性の独立性が十分に保証されないのに対して、人論的生活における個体性の自立性を保証しようとすることで発見するに至っていることを明らかにし得たことを挙げることが出来よう。これらを明らかにすることで、なお、ヘーゲルの断片「神的三角形」に窺えるような、ヘーゲルのベ-メなどの神智主義との接触など、研究を詰めなければならない課題も残されているが、しかしイエナ時代のヘーゲルの思索の発展を大筋において描くことが可能になったことは何よりもの収穫であると言ってよい。これらの研究実績は、一部はすでに論文として発表され、他の部分も近く刊行される書物、機関誌に発表される予定である。そして、最終的には来年度の研究と合わせて出来れば一冊の書物としてまとめたいと思っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 上妻 精 ほか: "ヘーゲル時代と先駆ける弁証法" 情況出版株式会社, 357ページ (1994)
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[Publications] 上妻 精: "ヘーゲル『人倫の体系』 (仮題)" 以文社(出版予定), (1995)