1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610168
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
國歳 眞臣 鳥取大学, 教育学部, 教授 (00032318)
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Keywords | 部落解放運動 / イデオロギー / 軍隊体験 / 農民運動 / 主体形成 / 被差別体験 / 天皇制 / 差別事象 |
Research Abstract |
平成6年度に聴き取りした鳥取県前解放同盟書記長M氏および舞鶴市全解連議長W氏の生活史をテープおこし後、文章図式化し分析した。まずM氏の場合、彼の解放運動への共鳴と参加が、自己の体験に裏打ちされた差別に対する感情的反撥や弱者一般に対する義侠心に根ざしたものであった。その後、戦争より帰国後農民運動のなかで、部落民としての自覚に出発する解放への斗いが開始されている。すなわち、彼の初期の運動は、主として個人的な能力に依存した感情的、非組織的な啓蒙運動にすぎなかったが、戦後、官制的な同和事業に対する批判を通じて、とにかく革新的なイデオロギーと結びつけられていく時に新しい運動のにない手が誕生してきている。ここから、リーダーとしての主体形成の重要なポイントが指摘できる。すなわち、自己の被差別体験にもとづく感情的反撥が一つのイデオロギーに出会うことによってリーダーとしての主体形成がなされたといえる。二つ目は、農民運動の中で、生じた差別事象との闘いの中でリーダーとしての主体形成がなされている点である。 一方、舞鶴市のリーダーW氏の生活史をみてみると、鳥取県の同和地区から移住してきた父親の舞鶴軍港への肉体労働者として被差別体験を味わってきたのを見ながら軍国青年として成長し戦後、軍隊から民間人として労働運動のなかで、一つの共産主義というイデオロギーと出会うことによって、リーダーとしての主体形成がなされたことが分った。 この両者の被差別部落民として、かつリーダーとしての主体形成にとって共通な点は、一つは人生の転換期にイデオロギーに出会うことにより、自からの感情的反撥を差別解消への運動論確立にしていったこと、もう一点は、軍隊体験が解放運動の中で、天皇制イデオロギーへの反撥に転換して、被差別部落民としての主体形成につながっている点が解明した。
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