1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610424
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
岩田 憲幸 龍谷大学, 法学部, 助教授 (90176553)
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Keywords | 中国語 / 官話 / 音韻史 / 明清 |
Research Abstract |
明清期の中国語語音資料に基づき,今日の共通語の母胎となった「官話」音の実態の解明を試みるという研究目的を遂行するため,今年度は主に語音資料の調査・閲覧・収集を行った。また一部資料について分析を進め,その結果を発表した(但し口頭発表)。具体的な内容は次の通り。1.国立国会図書館及び内閣文庫をそれぞれ数次訪れ、関係資料の調査に当った。明清期のものを片端から見ていく作業は予想以上に労力と時間を要したが思わぬ幸運にも恵まれた。『同声千字文』の全8冊(国会図書館蔵)の発見がそれであった。管見では、本書の価値についてこれまでに論及した者は国内外を問わずいない。本書は清初の呉語を反映した資料として高い価値を有するものであるが,なんと言っても『中原雅音』をあまた引く(1290余条)ことにおいて特筆に値する。『中原雅音』の韻書としての存在及びその語音研究は,これまで専ら『韻学集成』に依據していたのであるら,本書の発見は『中原雅音』の研究としても画期的なことと言わねばならない。ただその資料的勝ちについては『韻学集成』に引かれるものと比較校合をした上で慎重に論じなければならず,現在その作業を進めている。なおこの過程で邵英芬著『中原雅音研究』(山東人民出版社,1981年)所載の同音字表に脱漏・錯誤がいくつもあることに気がつき,『韻学集成』についても確認する必要のあることが判明した。このほか『韻表』『類音』『音韻正訛』『音韻清濁鑑』等についても資料的価値を見出した。2.以前から継続して分析を進めている資料について研究発表を行った(口頭による)。「『正音通俗表』音系的特徴」(中国音韻学国際学術研討会,1994年8月17日,天津,南開大学)。これを基に,平成7年度,論文としてまとめ公表する予定である。また「『同声千文文』に引かれる『中原雅音』」(仮題)として論文を執筆中である。
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